ジャンル:おそ松さん【腐向け】 お題:くだらない朝日 必須要素:吾輩は猫である 制限時間:4時間 読者:267 人 文字数:2229字 お気に入り:0人

借金NTRドンヒラ ※未完

凍り付いていた。
血の気が引いて、腰から下がゼリーのようになって、隣のくだらない若者が、とっときのアサヒビールを開けているのも咎められなかった。

カラ松は頭が悪い。早々に社会に出るのはカッコいいという感情的判断と、途方もなくぼんやりとした反教育社会思想により迷いなく高卒を決めたその数か月後に、お互いなんとなくびびっと来たという理由で子供を作り、親の金で結婚式を挙げてしまうような人間である。とにもかくにもお子様には金が要る。夢追い人で金が稼げるわけではないと流石になんとなく承知していたので就活というものを始めてみたが、空白期間長すぎ・資格なし・社会性なしの男がまともな職にありつけるわけもなく、流れ着いたのはキーボード叩きと体育会系挨拶ができれば即採用と言うブラック会社。『未経験歓迎、学歴不問、資格不要、やる気と根性ある人待ってます!』の文句に偽りなく、そこでは学歴も資格も経験も関係なくありとあらゆる業務が課せられた。できなければやる気と根性がない、というわけだ。だからって簿記のぼの字も知らない人間に会計をぶん投げてくるのは酷いと思う。カラ松は今でも、泣きながら会社に泊まった入社初日を覚えている。それでもバックレようとは思わなかった。理由は簡単、彼女にぞっこんだったからだ。
ここでちょっぴり彼女とカラ松の出会いを話そう。ダイジェストで。
在りし日のカラ松はニートであり、在りし日の彼女もまた、家事手伝いであった。いつものように橋の上で無為な時間を過ごしていたカラ松は突如舞い降りた女神に心臓を撃ち抜かれ、愛想笑いと言う名の春一番のごとき優しき暴風にすべての衣を吹き飛ばされた。「あなたはキレイデスネ」とコチコチになって言うカラ松は赤ん坊ぶりに裸だった。要するに一目惚れしたわけだが、だからといってさらけ出しちゃったカラ松を彼女が拒まなかったのは奇跡と言えるだろう。そう、奇跡的なくらいボロボロハートだった彼女は今更全裸の男を見ても怖がらなかったし、冷静に通報もしなかった。ただほほ笑んで、カーディガンを渡すと、橋の上からぽんと飛び降りてしまった。「きゃあ!」と言ったのはカラ松である。「ノー!」と叫んで身を乗り出したのもカラ松で、勢い余って自分も飛び降りちゃったのもカラ松である。二人は奇跡的に助かった。リア充たちがやったこともないのに川流れをしようと持ち出したゴムボートが持ち主の手を離れ、どこまでも流れていきそうだったところにカラ松たちは落ちたのだ。悲鳴と混乱の渦中でカラ松は起き上がった。彼女も起き上がった。ブラウスの下のささやかな膨らみがしとどに濡れていて、カラ松の目は一瞬紳士的でない動きをした。せっかく渡したカーディガンが流されていったので、彼女の目も一瞬淑女とは言えない動きをした。それから視線が絡み合う。カラ松は、今こそカラ松ガールズへのラブソングを奏でる時ではないのか、と気づいた。しかしギターがない。ならばオレがギターだ。
「運命の……」
彼女はえ? と言う。
「つまりオレたちの落ちたここは、愛の泉なんだ」
え?
「君を女神と思っている」
え?
「生きてるだけでディスティニーとは思いませんか! ベイビー!!」
家事手伝いは家事手伝いでも、彼女は由緒ある家事手伝いで、いつかはどこかの会社のお偉いさんと結婚する予定で、彼女はそれが堪らなく嫌だった。そこにニートのカラ松が起こした化学変化については、語るまでもない。
以上のような経緯でもってカラ松はこどもをこさえて結婚した。今、三か月目で、彼女のお腹もほんの少し膨らんでいる。

カラ松は彼女との生活に努力を惜しまなかった。義両親の反対も、ブラック会社勤めも、それに伴う屈辱も、カラ松にとっては乗り越えるべき障害で、障害を乗り越えた先にはラブラブハッピーエンドが待ち構えているものと信じていたからだ。
しかし何時まで経っても障害は消えてなくならない。義両親は顔を合わせてくれないし、生活はちっとも楽にならない。あれ、おかしいなと思い始めたころ、決定的な破綻が起きた。もともと彼女はお嬢様だ。豪華なおもてなしディナーは作れても、節約術など知るわけもない。彼女は自分がぼろアパートの1LDKに住む必要があることも理解できなかったし、ひと月に一度髪を切ったり、服や化粧品を買ったりできない理由もわからず、その原因たる預金残高の少なさにも首を捻っていた。そのうち危険な思考に足を突っ込む。ないなら増やせばいいじゃない。こうしてFXに手を出した彼女は三日で二千万の借金を作った。カラ松は仕事が忙しくて気づかなかった。
だから、ある日帰ってきたらヤクザに囲まれて震えている妻を目撃する、なんてことが起きる。

若い男。年かさの男。それから、偉そうな男。
部屋にいるのは三人で、若い男と年かさの男は見るからにその筋とわかる黒いスーツに身を包み、妻の両脇に立っていた。偉そうな男はカラ松より十は上だろうか。こちらは芸人じみた真っ白いスーツ姿でちゃぶ台に腰を落ち着けている。
白スーツはカラ松と目を合わせると、葉巻を咥えたまま唇を吊り上げた。
カラ松は途端に動けなくなった。脇の下がじわりと湿り、足に力が入らなくなる。蛇に睨まれた蛙というやつだ。
「ああ、旦那さんおかえりなさーい」
と言ったのは若い男だった。大股で近づくと、半開きにしてあるドアを閉じて、鍵まで掛けてしまう。





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