ジャンル:弱虫ペダル お題:黒いにわか雨 制限時間:1時間 読者:195 人 文字数:845字 お気に入り:1人

【東巻】奈落のどん底で、月を見ながら。

ぱらぱら、ぱらぱら。俺の心が脆く崩れ落ちていく。
そんなこと、今更どうだっていいんだ。何がどうなったって。
__巻ちゃんが居なくなった今、そんなもの無価値に等しいものだ。
俺のこの物を考える為の脳みそも、映像を映す眼球も、耳も口も全部全部、いらない。
木々がおおいしげる山の中俺は奈落の底への一歩を踏み出した。


俺は恋に落ちた。
初恋だった。どうしようもなく好きになって気になって、胸が苦しめられた。
どうしてもそいつが欲しくて__________独占、したくて。
俺は巻ちゃんを閉じ込めておくことを思いついた。
最初は巻ちゃんは楽しそうではなかったが俺としては満足だった。
巻ちゃんを完全な監視下において、誰の手も触れられない。
触れられるのは俺だけ。巻ちゃんを生かせるのも俺だけ。俺だけ。
その言葉の響きに酔うようだった。
…だが、そんな日々は長くは続かなかった。
監視を掻い潜って、巻ちゃんは置き手紙を遺して死んだのだ。
『ワリィな東堂。俺ちょっと死んでくるッショ。○○山で死ぬわ。お前が先に見つけたら俺は大人しく家にいるさ。最期の勝負だな尽八。』
山に着いて頂上の崖をめがけ走った、一心不乱に。
頂上には_____緑髪の男が立っていた。

「巻ちゃん‼︎」

俺が叫んだ瞬間巻ちゃんは空へ舞った。
巻ちゃんはくるりと振り返り最期に笑みをこぼした。



木々のざわめきが耳をかすめる。大粒の雨が俺を濡らしていく。
そんなことどうだっていい。
だが、巻ちゃんが消えた今生きる意味を見出せない。
普通に就職して。結婚して。子供を作る。
______だがそれは何になる。巻ちゃんの居ない世界を生きて
「何になる。」
俺は巻ちゃんの屍めがけ空を舞う。
空中を漂う間たくさんの記憶が押し寄せた。
夏のインターハイ、大学生活……そして巻ちゃんの不器用な笑顔。
____あぁ、俺は最期まで、お前が好きだった。
俺の頭から赤い花が散る。赤い赤い花が。

月の光が、屍と化した2人を照らし続ける。

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