ジャンル:NARUTO お題:ドイツ式の別居 制限時間:30分 読者:241 人 文字数:1533字 お気に入り:0人

シスイタ

・誰視点?シスイ視点


 森の上には雲の少ない澄んだ青空が広がっている。深い緑の葉をつけた大木の、太い枝の上に腰を下ろしていたシスイは、改め終えた忍具を荷の中にしまい、向かいに座るイタチに目を据えた。幹に背を預けているイタチの手には冊子があり、骨細な手が紙をめくるたびに小さくかさついた音がした。
 ほど近くを流れる河のせせらぎが絶えず耳に届いているが、高い鳥の声などは遠くの方に聞こえるばかりで、辺りには静けさで満ちていた。生い茂る葉の下で涼をとっている二人は、ときおり風が吹いて葉が揺れると、淡い光が降り注いでくるのを見た。
 イタチの膝にある冊子は角がやや綻びていて、紙の色も褪せた書物だった。地理や歴史を記した古い文献を手に入れたとき、イタチがいつになく喜んでいたのをシスイは覚えている。
 機嫌良さそうに紙をめくるイタチは唇こそとじていたものの、細い喉からは歌詞のない調べが聞こえていた。しばらくはその調べを聞いていたシスイは、腕を伸ばしてイタチの太腿をとんとんと軽く叩いた。
 冊子から顔を上げたイタチは、シスイと目を合わせるとそれで意図を汲んだらしい。あまり上手くは歌えないので聞かせるほどのものではないとイタチは述べたが、シスイは自分が聞きたいのだと応えた。
 目をやや空の方へ向けたイタチが、かたちのいい唇をひらいた。聞きなれない歌だったが、どこか懐かしく耳に心地いい調べだった。
 普段話をしているときはやや低い声を使うイタチは、高い音でも伸びやかで透った声で歌い上げた。意外だとあまり思わないのは、自分がまだ声変わりをしていなかったころの声を覚えているからだろうとシスイは思った。
 イタチが歌い終えたあとで、シスイはこの歌はどこのものかと訊ねた。イタチは、戦のなかで滅んだ一族のものだと聞いていると応えた。
 もっと聞いてたいとシスイがねだると、イタチは自分が歌って聞かせたのだから、シスイも何か歌って自分に聞かせるべきだと主張した。自分は下手なうえに照れるから嫌だとシスイが拒もうとすると、イタチは拗ねたような顔をしこちらに歌わせたのだからシスイも歌うべきだと返した。
 引かないイタチに根負けするかたちで、シスイも歌うことになった。期待はするなと前置きしてから歌いだしたシスイは、イタチが笑い出すものと思っていたが、聞いているイタチは目を閉じて真摯に歌へ耳を傾けていた。
 人前で歌うのは緊張するので苦手だったが、今回は相手がイタチ一人ということもあり、そういう意味ではそれほどの緊張はなかった。短い歌を終えたシスイが、話した通りうまくないだろうと述べると、イタチは低い音がきれいに出ていたと感想を述べた。
「歌っていても、お前は優しい声のままなんだな」
「ありがたいお世辞だと思って受け取っておくよ」
 世辞ではないと念を押したイタチは、どこの歌かと訊ねた。シスイは、以前に任務で赴いた霧の国で歌っているのを聞いたと応え、古い歌らしいと続けた。人が歌っているのを耳で聞いて気に入ったので覚えたものなので、原曲とは違うだろうとも付け加えた。
 話を聞いていたイタチが、霧の国は遠い国だなと呟いた。自分も任務で一度だけ行ったことがあるが、その歌は聞けなかったとイタチは述べた。
 身を乗り出してきたイタチが、唇に指の腹でふれてくる。それでシスイは察したし、イタチの方も自分の意志が通じたことを理解したらしかった。
 唇を近づけながら、求めてきたのはイタチの方でも、したいと思っていたのは自分の方だとシスイは思った。歌っているのをみている間も、
 重ねた唇は熱く、少しだけ乾いていた。シスイは潤いを与えるように、ゆっくりと口づけを深くした。

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