ジャンル:アイドリッシュセブン お題:愛の故郷 制限時間:30分 読者:126 人 文字数:1383字 お気に入り:0人

ここからぼくらは

※いおてん♀


 彼らと関わることが増えて、親睦を深めて、変わったことはいくつもあった。
 それはおのれの在り方であったり、仲間との関係性であったり、かけがえない「友だち」を手に入れたことであったり、本当に様々。
 彼らのおかげで前に進めた。後退は決して劣化だけではないことを教えてくれた。
 そんな、いわば初心に帰るために、そして「あること」を思い出すために、天にはつい立ち寄りたくなる場所がある。それは他でもない彼ら――IDOLiSH7の使用しているレッスン場だ。
「あなた、ここ好きですよね」
 もちろんここへやってくるのはひとりの力では無理だ。便宜上にも等しくはあるが、IDOLiSH7とTRIGGERの両グループはいわゆるライバル関係にある。事務所の社長同士もあまり仲が良いとはいえず――否、八乙女社長が一方的に敵視しているというべきか。とにかく公私問わず馴れあうのは推奨されていない。
 そもそも人の家に勝手に上がり込むようなものなのだから、家人ともいえる「誰か」の了承は不可欠である。そして、そんなときに天が頼るのはいつだって一織だった。
「わたしにとっては思い出の場所でもあるから」
 ゆっくりと、歩調をあわせて進む一織の背中を、天もまたのんびりと追ってゆく。
 ふたりの関係を表す言葉は、きっと「恋人」が最適なのだろうと思う。けれどそれだけではなかった。それだけで語れるほど、ふたりの積み重ねてきたわずかな歴史は単純なものではなかった。
 一織がレッスン場の鍵を開ける。今日はお休みの日だった。誰もいない、少しだけ薄暗くある鏡と見つめあいながら、天はふう、と長くない息を吐く。
「ここで、キミに知られたもの」
 天が女であるという最重要機密が知られた。天と、一織と、陸、3人で、秘密を共有する共犯者となった。天の、一織のなかの歯車が動き始めた。それらはすべてここで起きた出来事だ。
「……なんとなく懐かしいですね。まだ1年も経ってないのに」
「本当にね」
 天の横に立つ一織が、そっと彼女の肩を抱く。誰も知らない間に、ふたりを取り巻く空気はとても優しいものになっていた。
 きっかけはそう、Re:valeによるゼロアリーナのこけら落とし。そのなかで組むことになったシャッフルユニットの楽曲を練習する際、天の秘密がバレたのである。不注意だった、事故だった、いわば神のいたずらとでもいえる出来事のなか、それは大きな転機となり、いつしか一織は天へ好意を抱き始めてゆく。
 ひどい拒絶を受けても決して諦めなかった彼の想いが報われたとき、きっとそれが、ふたりにとっての絶対的な分水嶺となったのだろうと思う。
「特に何をするわけでもないんだけど、無性に来たくなるときがあるんだよね。社長には怒られそうだけど」
 傍らに鎮座するピアノを見つめながら、天はゆるりと微笑む。その顔はまさしく七瀬天のものだった。
「はは……そうですね。私もです」
「キミも?」
「ええ。まあ、私は日常的にお世話になってますので、無性に、というほどでもないですが」
 ――私たち、ここから始まりましたもんね。
 こつん。寄り添うようにして、一織が頭を傾ける。噛み締めるように目を伏せた天は、どこか泣きそうな顔をして、
「……うん」
 ひどく優しい彼の肩へ、くたりとその身を委ねていた。

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