ジャンル:獄都事変 お題:突然の強奪 制限時間:30分 読者:39 人 文字数:1455字 お気に入り:0人

不意打ち【肋斬】

朝からバタバタと忙しない足音が右に左にと駆け回る。
「田噛-。途中まで一緒にいこー!」
「アホか、方向真逆だ」
「佐疫、本庁に行くなら、これもお願いして良い?」
「良いよ~」
「病院に行ってきます-。明後日には戻りますー」
「はーい、いってらっしゃーい」

今日は、特務室全体として任務が多く。
その結果、複数人ではなく。単体での出撃が多くなっていた。

勿論、そのような事情もあって。今日は非番のモノも居ない。
あと少しすれば、大半の者が出掛けてしまい。館も静まりかえることだろう。

「今日は、災藤さんも任務だって言ってたから。実質お昼までは肋角さんだけだね」
「そうなのか……」
「うん。谷裂は早朝に出たらしいよ」
本庁に持っていくのであろう書類を外套の内側へと格納しながら笑う佐疫に、斬島は少しだけ首を傾げ。
そうして、ナニカを考えるように視線を彷徨わせる。

「佐疫は、昼前には戻るんだったか」
「うん。木舌も戻れるだろう、って言ってたね。斬島は?」
「……戻れると思いたいが……現場に入ってみないと。断言はできんな」
「そっか……まぁ、そうだね」
気をつけてね、と穏やかに笑った親友へと頷き。斬島は手にしていた愛刀を改めてベルトに装着し。飛び出していく同僚達に続くように玄関へ足を向けかけ……。そして、ナニカを思いついたかのようにその向こう側へと視線を向ける。

玄関の少し先にあるのは、肋角の執務室。
先程木舌が出ていった様子だったので、今は肋角のみなのだろう。

「斬島?」
「……ああ、いや。肋角さんんに挨拶をしてから行こうかと思ってな」
「そっか。うん、そうだね」
俺も残りの書類が揃ったら、挨拶しに行こう、っと穏やかに語る親友に軽く頷いた斬島は、少しだけ急ぎ足で執務室へ向かった。




「ん?斬島、どうした?」
執務室では案の定、肋角が淡々と書類を片付けている。
斬島の任務に関しては、既に事前に説明を受けて居るので。改めて聞くことも無ければ、確認するモノも無い。

ソレはないのだが……。


「肋角さん、少し……5秒ほど、よろしいですか?」
「5秒? まぁ、かまわんが」
肋角の許可を待たずにツカツカと足を進め。執務室を回り込む。
そうして、斬島の足が止まったのは、執務椅子に座っている肋角の隣。

肋角の右手がペン立てにペンを戻したのを確認して、彼がナニカを言うより早く

「……ッ!」
素早く帽子を脱ぎ。此方を見上げてきていた視線を交わすように身をかがめて掠め取った唇。

ソレは、一瞬だけ重なり。
甘く軽い微かな音だけを残して離れていく。

「……」
「以上です。失礼しました」
そうして、極自然な……しかし不自然なほどの素早さで帽子を被り直した斬島は、そのまま足早に入り口へ向かい。
「では、行ってまいります」
「あ、ああ」
突然のことに、流石に驚いているらしい肋角の視線の前で、見本のように綺麗な敬礼を残し。素早く部屋を出て行った。




「あ、斬島。もう挨拶したの」
「ああ。問題なく。では、行ってくる」
「うん。いってらっしゃい」
駆け足に近い速度で出ていく斬島の背中をしばらく見送り。佐疫は少しだけ意味深な苦笑をこぼした。
「……なんだか、楽しそうだったなぁ……斬島」

そうして、軽いノックの後足を踏み入れた執務室では、いつもと少し様子の異なる肋角が煙草を吸っていた。
「……珍しいな」
佐疫のこぼしたソレは、いったい誰に対しての言葉だったのか。

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