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ピエロ部屋へようこそ

「おえっ。何回入っても気分が悪くなる」
「も、もう大丈夫なんじゃ、な、ないの?」
薄暗い部屋に所狭しと犇めき合う白塗りピエロの群れ。中に入ってきた者を取り囲む配置で壁際にずらっと乱雑に置かれ、その生気のない不気味な視線は一様にこの部屋に入ってきた者を見詰めている。
異様な雰囲気が立ち込める部屋の奥、扉から入って真直ぐ進んだところに置いてある棺桶の上には唯一動く白塗りピエロがにんまり口元に笑みを浮かべ二人の様子を眺めていた。開いた股の間に手を着き、足をぶらぶらさせている。
「まだこわ、怖い?」
「怖い云々より、単純に不気味だろこの部屋」
「な、なるほど」
「クールじゃない部屋のセンスはベン以上だぜ――、ビル?」
嘔吐く真似をして気持ち悪さをアピールしていたリッチーの隣からビルの姿が消えた。と、いっても周囲をぐるり見渡せば彼は棺桶近くに立っている一体の白塗りピエロを眺めていた。
間近にいる動く白塗りピエロも顔を彼に向け様子を窺がっている。
「どうした?」
駆け寄ってきたリッチーにビルは目の前のピエロを指差した。棺桶に座っているピエロと違い、これぞピエロだと云わんばかりな風貌。だぼっとしたズボン、ボリューミーでいて派手な衣装を身に纏い、目の真ん中に描かれた縦線のメイクは青色、なにより留まる事を知らない陽気さが滲み出ていた。
「こここれだけ、他とふ、雰囲気が違う。な、なんか動ききき、そう」
「うーん?」
興味を再び目の前のピエロに戻したビルにリッチーは小首を傾げた。たしか以前入った時はこんなピエロはいなかった、と思う。いたとしても背は少なくとも子供の自分より小さかった、はずだ。
棺桶から飛び降りてひょこひょこ後ろから覗き込むピエロより壮年らしい見た目はなんだか歴戦のピエロっぽく見えなくもない。
訝しげにリッチーの眼鏡奥の瞳が件のピエロをねめつける。すると、丸い赤っ鼻がヒクヒク動き出し、

「ハロー、こっちの世界のビルとリッチー」

やたらフレンドリーに話し掛けてきた。やはりこいつ生きている。
固まっていたマネキンが突如喋ったのでリッチーは大いに狼狽えたが、やや見抜いていた所為もあってかビルはそこまで驚かず自分より背の高い相手を見上げていた。兎角他のマネキン達が動く気配はない。
「こっちの君も賢そうで手強そうだ」
「こ、こっちっていういう事は……。ここじゃない、どどこか別の世界から、き、来たのか?」
「そういうことだ」
その時ビルは思った。こっちだろうが、あっちだろうが動く白塗りピエロことペニーワイズは何処の世界でも声を潜めて喋るのだと。
そして、隣にいたリッチーを押し退けていつの間にか此方の世界のペニーワイズが隣にいるのを漠然と感じていた。
「俺の名前はペニーワイズ。じゃあ、これから親睦を深めるってことで」
べったり張り付いた笑みを浮かべたまま、ビルと対峙していた――別世界のペニーワイズが両手を広げ成長期真っただ中の少年の体を抱き締めた。所謂ハグというやつである。
「よろしくな、ビルゥ~……」
悪意に満ちた口元から覗く鋭い牙。とても見たことのある光景にリッチーは喚き散らしビルから離れさせようと手を伸ばした。
「ふぐっ」
若干勢いよく鼻先がぶつかったものの、体を抱き締める腕の感触並び見た目に違わずボリューミーな柔らかさと弾力にビルは頭の隅で数年ばかり前の記憶を呼び起こしていた。たしかあれはジョージが産まれる前、両親に遊園地へ連れて行ってもらったあの日。遊園地にいた着ぐるみに抱き付いて抱き締め返されたのにそっくりだ。
両親に抱き締めてもらうのとは別の満たされるこの感じ。ビルが感傷に浸っていると無意識に腕が動き、気付けばペニーワイズの背中に回されていた。
「えええええ!?ビルなにしちゃってんのおおおお!?!?」
違うペニーワイズにハグされて頭でもイカれたか。
そうのたまうリッチーを他所にハグを返された壮年のピエロは一瞬目を瞠り、すぐ値踏みをするように眇め喉奥でクツクツと笑いだした。
眼前まで迫っているこの時代の白塗りピエロの面持ちを見て笑わずにはいられないといった風に。



「こいつは残念、フラれちまった」
ビルの首根っこを右手で引っ掴んで後ろに引っ張り、そのまま右手はビルの首根っこ、左手はリッチーの右腕をしっかり握り距離をとる姿を見て益々壮年の白塗りピエロは意地汚い笑みを深めた。

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