ジャンル:アイドルマスターsideM お題:箱の中の恋 制限時間:30分 読者:116 人 文字数:1237字 お気に入り:0人

【P玄】あなたがわらうから

仕事が終わって、報告の為に事務所に向かう。
任された仕事は無事こなしたと、忙しそうにデスクに向かう番長さんにそう告げるために。
そんなこと電話の一本入れてしまえばそれでいいはずなのに、それでもこの足が向かうのは下心という奴だろう。
一目、会いたい。
パソコンに向かいながらも、それでも俺の話に耳を傾けている、その番長さんの横顔が見たかった。
ほう、と息を吐く。
冬の寒さが俺の吐息を真白に変えた。
それが余計、俺の足を急かす。
歩くスピードを上げ、俺は半ば走る様に事務所へと向かった。

「よう、玄武」
事務所のドアを開ければ、番長さんがソファーに座ってコーヒーを飲んでいる。
珍しい、と思いつつも中へと入れば、外と中の寒暖差のせいで眼鏡が曇る。視界が狭まる。
「番長さん、休憩かい?」
「おう。一区切りついたんでな、ちょっとばかり息抜き」
ずず、とコーヒーを啜って番長さんが笑う。
「玄武も仕事終わったのか。悪いな、見に行ってやれなくて」
「いや、問題ないさ。今日の仕事は滞りなく進んだ。番長さんの手を煩わせるまでもねえ」
「それならよかった」
彼の正面のソファーに腰掛け、簡単に今日の報告を済ませる。
いつもと違って、番長さんが俺を真っ直ぐ見ながら話を聞くものだから少しばかりぎこちなくなってしまったが。
それでも、やはりこの時間は幸せだ。
彼が俺の話をうんうんと頷きながら聴いてるその姿だけで、今日一日の疲れが吹き飛ぶ。
たった数分ではあるが、それだけで俺は満足だった。
「…と、報告は以上だ」
「了解。朱雀は?」
「そのままスタジオから帰った。何か連絡でもあったかい?」
「ああ、いや。うん。後日でも良いんだが」
番長さんがそう言いながらソファーから立ち上がる。
デスクの引き出しを何やらゴソゴソと漁って、彼が何かを取り出した。
六角形の赤い箱。ラベルに「のど飴」と書かれている。
「この時期乾燥するから、喉に良い飴ないかなって探してな。なかなか美味いし喉にもいいって言うんで、幾つか多めに買ったんだ」
やるよ、と差し出されたそれを、俺は思わず受け取ってしまう。
箱の見た目や手触りから、中々値の張るものだろうと察することが出来た。
「良いのかい?」
「良いよ。なんだったら、今一口食うか?俺、さっきまで食べてたから」
デスクの隅に置かれた飴を番長さんがとって、俺に渡す。
透明なフィルムから、黄金色の宝石が輝いていた。
どうぞ、と番長さんが目で促してくるので、俺はフィルムをはがして口の中へと放り込む。
ころん、と舌の上で飴玉が転がると、すぐに甘さが広がる。
蕩けるような甘さ、というのだろうか。うまい。
「ああ、美味いな」
「そうか、それはよかった」
番長さんが笑う。
「大事に喰うよ」
「そんな大げさな。ま、気に言って貰えたならうれしいけどな」
大袈裟なんかじゃないさ。
俺は手の中の箱を優しく抱きしめながら、楽しそうに笑う彼を見た。
飴玉が一層甘く感じた。

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