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おわりのおかであいましょう

長い階段を上った先。そこにあったのは、ただ皆が一方を熱心に見つめる姿だった。



フランスのパリは郊外。モンマルトルーー殉教の丘――と呼ばれる、小高い山の上に二人は居た。白いコートで顎先までを隠し、ふぅっと、更に白い息を吐いたアルジュナが自分の歩いてきた方を振り向く。モッズコートを羽織り、フェイクファーで、こちらは口元までをぐるりと覆った今時の若者に見えるロビン。アルジュナはロビンが欠伸を噛み殺しながらもしっかりと歩いていることを確認してから、大きな大聖堂の前に開かれた階段の脇による。

アルジュナとロビンにレイシフトの命が下りたのは、体感時間において三日前。西暦二千年のパリで微細な特異点の欠片を観測した、とマスターより伝えられ、子細がはっきりとしないのであればと斥候を申し出たのがアルジュナだった。
アルジュナはカルデアの初期にやってきたサーヴァントであり、何より単独行動スキルを持っていることから数々の特異点でマスターとの別行動を行い、修復に一役買っていた。修練度も高く、自他共に認める英雄の立ち姿、そのものであった。そのアルジュナが単独でのレイシフトを申し出た時に、マスターである藤丸は少しばかり迷った顔をした。そしてアルジュナに、今回は二人で行くように、という命が下った。
その相方ともいえよう存在が、ロビンだった。
ロビンフッドとは特異点――北米にて刃を交えた間柄であるが、それはそれ。藤丸がアルジュナを糾弾しないのにロビンが責めるはうzものあい。ただ、ロビンはカルデアでアルジュナに会ったときに、軽く右手を上げて挨拶をしたくらいだ。

ロビンと組まされたのは、ひとえに、彼がこうした情報収集能力にたけているからだろう、とアルジュナは推測する。しかしそれを無視したかのようなロビンの声が聞こえた。

「どうしてここに俺と来てるのかが不可解って顔っすねぇ」
「? 斥候や情報収集は貴方の領分でしょう」
「はぁ、まぁ」
「机上の空論と霧散させぬのが私のやりようです。あなたの命が今はマスターの命と同義であることは理解しています」

どうぞ、とアルジュナが平坦な声で促すと、ロビンは珍しく口ごもった。アルジュナが知るロビンは、誰とでも会話を弾ませる人物であったため、困惑の雰囲気を滲ませるのは奇異に見えた。
殉教、という言葉に潜められた暴虐の歴史を踏みしめながら、アルジュナは石畳の上で背筋を伸ばす。夜の帳が掻き消え、もうすぐアルジュナの悲喜する朝がやってくる。

「……あぁ」

ロビンの沈黙に対して、私がいけないのですね、とアルジュナは心得たとばかりに頷き、すぅ、と唇の端を持ち上げる。
その輪郭を、今まさに登ってくる朝日のきらめきがなぞり、ぼんやりとした境界線として浮かび上がらせる。黒曜石と見紛う瞳の中に陽光の一閃が走り、一般市民であればうっとりと心をときめかすような性別を不問としない高貴さの塊。

「……」

ロビンは何も言わず、アルジュナをじっと見ている。ロビンが寒さにうちひしがれる森の中の小鳥ではないように、アルジュナとて暖炉のぬくもりしか知らぬ飼い猫ではない。二人の視線は、混じり、合わさり、そして融点を見失う。

「うまく使ってください。殺しても死なぬのです」

ぽつんと落ちたアルジュナの言葉に、今度こそロビンは白い息を盛大に吐いた。

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