ジャンル:テニスの王子様 お題:純粋な哀れみ 必須要素:リアルな描写 制限時間:1時間 読者:117 人 文字数:2804字 お気に入り:0人

雪の話

(寮母と管理人でオリキャラ居るよー)

【雪が降った日】

「明日は東京都の学校、全部休校になるって。雪が酷くてなぁ……」

聖ルドルフ学院の男子寮にて、観月はじめは寮の管理人から明日の話を聞いた。
聞きつつも、窓の外を眺める。温かな談話室と違い、外は雪が降り続けていて冷え切っている。
談話室のテーブルで観月は煮出し式のミルクティーをお気に入りのティーカップで飲んでいた。
使った茶葉はアッサムのCTC製法のものであり、茶葉を最初から丸めて潰してあるため、
お茶の出がとてもいい。さらにはアッサムはミルクティーに良く合う茶葉だ。
牛乳もいいものを使っているし、

「休校ですか。それぐらいの雪に……」

「なるっぽいね。都会ってものすごい雪に弱いって聞いとるんやけど」

「雪かきの準備は出来ていますか」

「夕方に君らがスクールに行っとる間に赤澤君と金田君に手伝て貰て、スコップとかいくつか買といたわ。
ええ店員さんに巡り会えた」

テニススクールに行っていた観月達がテニスを学んでいる間に管理人は管理人で準備はしておいたらしい。
言葉からして、管理人も都会の雪は初めてというか不慣れなようだ。
管理人は湯飲みで観月が入れたミルクティーを飲んでいた。お裾分けをしている。
観月は管理人のことが嫌いではない。寮内ではある程度のルールさえ守ってくれれば自由にさせてくれている。

「故郷に比べたら、となりましたが都会は都会の事情がありますからね」

「せやね。こんな雪ならテニスも出来んし……電車とかも停まりそうやから」

「停まりでしょう。念のために訊いておきますが食料は」

「買い込んだ。さすがに二食は夕方に纏めて送ってもらっとるけど、早めたりとかスーパーで購入しとる」

「どうにか、過ごせるでしょう」

聖ルドルフ学院の寮は朝夕の二食が出る。昼が出ないのは校内の食堂か各自の持ち込みだからだが、
休校しそうだと言うことで買い込んで置いたそうだ。さすがに個人で雪のための準備をしろだなんて、
ことは言わない。

「ボクは雪は寒いとか冷たいとかとか暗いイメージしかなくてなぁ」

「そういうものでは。ロマンスを感じるのは子供時代でしょうに」

「……君、未成年やよね?」

「雪国出身者の雪との付き合いは甘いものではないのですよ」

管理人が聞いてくる。京都弁らしいものを使う彼に観月はかつての故郷のことを想い出しては、
ミルクティーを飲むことで気分を落ち着けていた。




「かまくら作れるぐらいには降らなかったか」

次の日、寮に来た赤澤吉郎に観月は哀れみの目を向けた。本気でかまくらを作ろうとしていたらしい。
赤澤も完全防寒だが観月も完全防寒だ。

「……君、かまくらを作りたかったのですか?」

「憧れるだろう。かまくらって」

東京都で小中学校が全校休校になるぐらいには雪が降り積もった。
一日オフのような状態であったのだが、観月にはやるべきことというか、雪かきが残っている。
管理人がホームセンターで探してきてくれたのは金属製のスコップを赤澤は持っていた。

「赤澤部長。それぐらいの雪が降ったら、東京都は壊滅していますよ」

「そうですよ。ただでさえここに来るまでも大変だったのに」

不二裕太と金田一郎も口々に言う。
裕太は壊滅と言っているがそれぐらいの打撃は受けそうではあった。
赤澤と金田は自宅があるが暇とか遊びに来たいとかで寮に来たのだが雪かきを手伝って貰う。
東京都にしては、雪が降った。
積雪は二十センチ、観月の故郷ではたいしたことが無い範囲に入るが東京都にとっては大ダメージだ。

「みんな、頑張ったら管理人さん特製の鍋が待ってるだーね。野村が鍋を手伝ってるだーね」

「女子寮の方の雪かきも手伝って欲しいってさ」

柳沢慎也と木更津淳も言う。
雪かきは男子寮や女子寮の前をすることになりそうだ。
女子寮については雪になれている者が何人か居るそうだが、それでも手伝いは居るだろう。

「これ、近所までしないといけないことになるかもしれませんね」

「観月さん、遠い目をしていませんか。誰かがやるので……」

「誰かやる人がこの辺りに居ると想いますか!? 細い路地とか除雪車が来ないんですよ!!」

この辺りと言うが女子寮や男子寮の周辺にはそこまで建物はない。雪の量は大分ある。
雪かきを開始しようとした矢先、声がした。

「男子テニス部の皆」

「寮母さん」

裕太が声の主に呼びかける。
黒髪の長髪に紫色の瞳、見た目は十代から二十代に見える女子寮の寮母が雪を踏みしめてきた。
着物の上に和柄のコートを羽織っている。今日は和服でいるらしい。
その割に足下は長靴だった。

「長靴……」

「是の方が良いらしくて」

「積雪量によってはブーツなんて役に立たなくなりますからね。役立つのは長靴ですよ長靴」

「観月の声に実感がこもっているだーね」

着物と長靴というちぐはぐな組み合わせであるようで歩くには丁度良い組み合わせだ。
何せ雪は怖い。溶けてきたら氷ったりしてさらにそれが危険だ。

「理事長から電話がかかってきたのだけれど、ここが終わったら、商店街の方の雪かきの手伝いと、
それと一人暮らしのお爺ちゃん達の見回りを頼むって。単位として奉仕活動として入れたりしておくから」

「女子の方は」

「似たようなもの。男子の出方で変えるって。……話によると商店街の方、雪で軽いパニックが起きてるみたい」

「寮母さんはどうして」

「鍋に入れるお味噌を貰いに来たの」

きらしたらしい。
女子寮の方も鍋らしいが鍋は楽だからだろう。味噌味なのは共通というか聖ルドルフ学院の寮は各地から
集まった生徒が居る。文句を余り出さない統一した味のために必要なのだろう。
聖ルドルフ学院はキリスト系の学院だ。

「観月、どうするんだよ。俺としては無理ですって返しても良いけど」

「……仕方が有りません……ここを終わらせて……」

「俺、かまくらは出来なくても雪合戦してーよ」

「まずは奉仕活動ですよ! 良いですね!! 鍋の手伝いをしている野村君も呼んできてください。それからテニス部も
生え抜き組も集めて……」

テニス部部長がアテにならない状態であり、毎度のことだとなりながらも観月は先のプランを考え始める。

「雪かきしておくか」

「そうですね。体力を使うみたいですけど」

「六角は今頃遊んでいそうだな……」

「終わったら遊ぶだーね」

裕太も金田も木更津も柳沢は自主的に動き始める。

「赤澤部長、まずは寮の雪かきを終わらせますよ」

「かまくら……」

「……秋田にでも行ってください」

まだ未練があるのか言う赤澤に観月はいらだちと哀れみの目を向けた。


【Fin】

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