【プチ徐】意外と順調

鏡に映し出される気合入った格好。首を捻り後方も念入りに確認。鏡に顔を寄せ前髪を撫で整え、更に角度を変え左右もチェック。窓辺から差し込む陽光に照らされキラキラ輝くブレスレットをはめた手首を目の前に持ってくれば思わず口元が緩む。
カレンダーに増えた赤い印を見た途端、踊っていた心が静かに踊りを止め頭の中と目の奥から熱が消え失せた。
「何、張り切ってはしゃいでるんだろ」
日に日に増える赤い印の上に黒い印が上書きされる現実に溜息一つ。待ち合わせまでの時間が刻々と近付いているのを秒針が告げる。
かなりの余裕をもってしていた身支度。あとは昨日フラっと立ち寄ったお店で一目惚れして購入したブーツを履いて待ち合わせ場所に行くだけ。背筋を逸らして逆さまになった世界の向こう。スマートフォンが着信音を鳴らし新しい通知が来たのを教えている。
ベッドの上で機体を振動させながら暢気に歌うのを止めさせながらベッドの縁に腰掛けた。ディスプレイに浮かぶ文字列に頭の隅で聞き覚えのある抑揚のない声が淡々と呟く。全くもってその通りだ。
色々講釈垂れた文章が書き綴られているが、とかく要は”今日の約束は反故になった”で大体相違ない。
セットした髪も気にせずベッドに倒れ込む。手の熱でぬるくなりだしたスマートフォンを握ったまま手の甲で目元を隠す。
「どうせ気合い入れた格好でいっても別にあいつは何も言わない。何も感じない一欠けらも思ってはいない」
吐き捨てた言葉に滲む微かな気落ちした感情に嘲笑する。お天道様はまだまだ現役真っ盛り。沈むまで時間があるが、やる気を失ったお陰で眠気が足元から這い上がってきた。丁度いい不貞寝と洒落こもうじゃないの。バッチリしたメイクすら落とさず、うたた寝しようとした矢先握っていたスマートフォンが震えだす。新しい通知を確認する気も起きやしない。腕を伸ばすのに合わせ放り投げ背を向けた。
寒いわけではないのに膝を抱え背を丸め縮こまる態勢は確かに温めようとしている。それはきっと体ではない。疲れた心を温めようとしているんだ。
薄靄かかる意識の中、寝息を立てる傍らで誰かが寄り添い頭を優しく撫でる気配で目が覚めた。
窓から差し込む陽の光はすっかり茜色を帯び室内を夕焼け色に染め上げる。定まらない視界で自室を見渡し、ゆるゆる体を起こしたら意志とは関係なく体が傾き酷く収まりのいい場所に収まった。

「少しばかり遅れると送った筈だが。よもやすっぽかされるとはな」
未だ覚醒しきれない頭で思考を巡らす。いや、確かにあの文面には遅れるなんて文字は何処にもなかった。反論すべく距離を取ろうにも離してくれる気配は毛頭ない。どうせ起きるまでの間、部屋の中を見て片付いていないだの、だらしないだのブツブツ言っていたに違いない。もしかしたら証拠隠滅で送った証拠を削除しているかもしれない。
だけど、そんなこと如何でもいい。
「あんたがいつも遅いからでしょ」
「以後気を付けよう」
心地よい腕に包まれ蓄積していた澱が溶け消えていく。他にも沢山言いたいことがあった筈なのに何も考えられず、ただただ温もりを感じ浸りたい。

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