残念でした

足元で蠢いていた黒い靄がビルの感情に共鳴して彼に群がり纏わりついた。憎悪、怒り、果たせなかった無念が糧となり勢いを増した黒い靄が白銀色の衣装を真逆の色で覆い隠す。
夜の暗がりに視界を全て遮られる寸前、ビルは静かに右手を前に突き出した。突き出した先、あの忌々しい悪夢が這出ようとしている場所に手を重ねやおら指を閉じる動きに合わせ纏わりついていた黒い靄が形を成し彼の手に収まった。冷たく硬い鉄の感触。質量を伴った黒い靄は鈍く輝き、白銀色の衣装も黒い靄が一か所に纏まったお陰で元の色に戻った。
「”はじめて”ダメージらしいダメージを与えたものを選ぶとは実に君らしい」
空を幾度か裂き感触を確かめるビルに壮年の道化師が生々しい笑みを浮かべた。細長く鋭利な先端を一頻り眺めた後、闇の大口から今まさに顔を覗かせた忌々しい悪夢を殺意と復讐心に彩られた金色の瞳が視界に捉えた。嘗ての仲間を思い遣り弟を愛した青い瞳の面影は欠片一つ残ってやいない。
「おや?目覚めの時に誰かに出迎えられるなんてはじめてだ」
唇を尖らせて笑う不気味な笑顔。背に隠した鉄柵を掴んだビルの手に力が入る。一歩また一歩確実に距離を縮めるビルを見詰める飄々とした金色の瞳は一時も彼から逸らされず。
「しかも私と同じ衣装!これは何かのサプライズかい?」
大口から身を乗り出す間、片時も目を逸らさず見続けていた。
視界の高さが逆転しようともビルの瞳に迷いの色は浮かばない。力が入り過ぎ戦慄く右手が叫ぶ。はやくはやくこの人食い悪魔の息の根を止めたいと震え訴え、失いたくなかった弟の命を今度こそ救えと慟哭する。
後方で佇む壮年道化師の瞳が怪しく輝いたのを皮切りにビルが後ろに隠し持っていた鉄柵を振り上げた。



「──でも、駄目じゃないかビル。こんな面白くない贈り物を私に寄越そうとするなんて」
身の毛がよだつほど夥しい情欲に彩られた”それ”の声が一瞬ビルの動きを封じた。
壮年道化師の顔が俄かに曇り出し、間を置いてビルも”それ”の脳天目がけ鉄柵を振り下ろしたが軽快な動きで避けられてしまった。
大袈裟な態度で避ける”それ”に壮年道化師の目から静かに熱が消え冷えていく。

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