ジャンル:カルジュナ お題:ナウい映画 制限時間:15分 読者:103 人 文字数:1477字 お気に入り:0人

【カルジュナ】ショタスナイパーxボス8

 私とカルナはアジトにしている隠れ家たちを闇夜に紛れて襲撃し、その都度に部下を開放して回った。皆、ある程度は人権を守られていたようで、私は密やかに安堵の溜め息を漏らすばかりだった。今までも、不要な中堅を切った後は、その部下をも取り込んで活動を広げていたのだから、むざむざ手駒を少なくするつもりはなかったのだろう。それが幸いしたとも言える。


「いやぁ彼らときたら私の美貌に嫉妬ばかりでね、参ったよ」

 フィンが、黴臭い収納棚に閉じ込められていたとは思えないほど晴れやかな顔で笑ってくるものだから、私もふと唇が緩む。その間もカルナも私も残党の動きを感じる度にそちらに銃弾を撃ち込んでいたが。

「さて、ここまでコケにされてしまって、君はどうするつもりだい」
「どうしましょうね。それよりも貴方の護衛は?」
「ディルムッドのことなら心配いらない! 私は見ていないが何処かに捕らわれてそれきりだろう!」

 はは、と白い歯を見せながらフィンが笑う。よくよく見なくても、この人がマフィアに属しているなどとは、観光客に聞いてみても十人中十人が笑い飛ばして信じようとはしないだろう。そして余談だが、本当にこの後、彼の護衛を務めていた筈の青年は違うアジトから救出した。

「カルナにも言いましたが」

 私はちら、と背後のカルナを見てから言葉を続ける。

「先に裏切ったのはあちらです」

 私の目を見て、フィンはさも面白そうに、またも笑った。この男は銃火器もさほど得意ではなく、かといって体術が目を瞠るほどでもない。だが、機を読む力と交渉術に長けた男だ。

「よし、行こうじゃないか。目標は常に大きく、次期ボスだな!」

 そのフィンの予言めいた言葉に肩の力を抜きながら、私は再度一歩を踏み出す。

「アルジュナ」

 私に付き従うようにカルナが右隣りに並ぶ。カルナは私が左利きであることを理解しているから、死角を守るつもりでいるのだろう。その、白く露呈した膝小僧は硝煙と爆風で灰色に煤け始めていた。頬には油が跳ねていて、何処かで切ったのだろう、指先からほんの少しながら出血していた。対する私も、いつものオフホワイトのスーツの裾は黒く汚れているし、革靴の中で指が軋んでいる。よれたネクタイを抜き取り、そのあたりで放ろうとすれば、それこそ犬のようにカルナが飛びつき、私のネクタイを奪っていった。

「何をしているんです」
「犬には首輪もリードも必要だ。まずこれは首輪にしよう」

 銃を傍らに置き、たどたどしい手つきで小さい手が大人用のネクタイを首に巻いていく。私はそれがやけにアンバランスで、酷く愛おしいものに見えた。
 きっとこれは戦況の中で放出されたアドレナリンが異様に働いた結果の衝動で、そこに本当の感情が無かったとしても。

「カルナ」

 ゆっくりと腰を折り、私はカルナの額に口付けた。ぽかん、と口を間抜けに開けたカルナの顔が目に入る。ここが血なまぐさい部屋の中でなかったら、年相応の子供の表情に見えたに違いない。
 外から、いつの間にか脱出していたフィンが鳴らす車のクラクションが聞こえ、私は躊躇なく歩き出した。

「前金だ」

 それから私たちは面白いくらいにばかすかと火薬と火のお世話になって、私を殺そうとした人間を返り討ちにし、ついでにその地位ももらってやった。
 まるでジェットコースターのようなシンデレラストーリーだろうか? それともビースト?
 どちらにせよ、私の隣には未だ白い犬が、私の命を待っている。その爛々とした瞳で。

【END】

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