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【ロビジュナ】嘘から出たプロポーズ

 それは風のように、または嵐のようにカルデア内を駆け巡る。或る者は一笑に伏し、或る者は首を傾げた。果てはまたも登場人物の少女が言う。『彼を最も愛する人が、彼の一番になるのですって!』それを、お戯れをと笑い飛ばそうとしたアルジュナ本人の前に、見慣れぬ緑が現れた。息を荒げて、額に何らかの汗をかいて。何処から走ってきたのだろう。もしかしたら、カルデアの端の喫煙所からだろうか。

「アンタ、まだ、誰のモンでもないですよね?!」

 目深に被ったフードのせいで表情は見えない。けれども手袋越しに掴まれた手首からは火傷しそうな熱さがある。露呈している手のひらが、白い肌を真っ赤に染めて。アルジュナはロビンフッドと大して話したこともない。互いにカルデアが全力疾走で背水の陣を突っ切り始めた初期から居たとして、あの特異点を過ぎてからというもの、アルジュナはどこかぎこちなさを感じていた。だから、ロビンフッドがこんなにも近くにいることも、自分を掴んでいることも、全くもって予想外だった。
 何か言わねばと思うほど、舌の根が乾く。もつれてうまく踊れないダンスパーティに一人取り残されたようだ、とアルジュナは思う。

「まだ、未納品、です」

 アルジュナの返答に、作家陣が手を叩く。語り部は口をあんぐりと開き、教師は頭を抱える。インターネット注文するには、些か価値が重すぎるだろうに。
 ロビンフッドは衆目などには目もくれず。気にするほどの余裕もない声で叫んだ。

「なら、オレにしとけ!」

 ぎゅう、とアルジュナを握る手に力が籠る。アルジュナの視線の先、フードの奥に耳まで赤くなった、白人特有の肌はどこへやら、というていのロビンフッドが見える。一種、泣きそうなくらいに歪んだ瞳で、お気に入りのおもちゃを取られた子供のよう。
 アルジュナが返答しないまま、ロビンフッドは言葉を重ねる。もう、勢い任せにぶっちゃけてやる、という本音が肩越しに見えそうなくらい。

「アンタを愛してるだけなら、だったら、オレだっていいでしょう!?」

 愛されていることを知っているアルジュナは、自分に向けられる感情の種類を間違えない。ロビンフッドから向かうベクトルが、アルジュナの心臓を狙っていることも。もしもアルジュナがその矢を避けたとしても、もう一度、何度でも立ち上がってくるだろうことも。当たって砕けたとしても、それをかき集めて、混ぜ物まで詰め込んで固め直してくる者の瞳だ、と。
 アルジュナに届くのは、大衆の冷やかしでも、冷静に成り行きを見定めようとしている王たちの視線でも、槍を磨く宿敵の殺意でもない。ただ眼前の、自称一般人の持つ、愛をつがえた弓矢のみ。

「……返答、できかねます」

 は、とロビンフッドの空気が揺れる。

「私に愛を語るなら、目を見て言ってくださらなければ」

 瞳を穏やかに細め、ロビンフッドの手に、自らのそれを重ねた。途端、ロビンフッドは勢いよくフードを剥ぎ、アルジュナの予想通りの表情で、ただ一握の希望を求めて、喉から手が出るほど欲しい綺羅星の言葉を待っている。

「ぁ、……愛してます」

 ロビンフッドが、真っ直ぐにアルジュナを見つめて言ったと同時、まるで「よくできました」、と褒めるようにアルジュナはロビンフッドの手を払って、自分から抱き着いた。腕を回した首は、それでも確かに戦場を生き抜いた英雄と言えよう太さで、アルジュナは鼻先をロビンフッドの耳元を鼻先でくすぐりながら、感嘆の息を零した。
 まるで、大輪の花が咲いた、一瞬の時を閉じ込めたかのような甘やかな笑みに惑わされているロビンフッドはまだ気付かない。ここが衆目の下であることと、それを見ているのは、ロビンフッドに好意的なサーヴァントだけではないことを。

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