ジャンル:文豪とアルケミスト お題:穏やかな体験 制限時間:1時間 読者:82 人 文字数:877字 お気に入り:1人

平々凡々

紅茶を上手に淹れることに成功した。ミルクは冷蔵庫から出して暫く常温に置いたもの。ビスケットは角の菓子屋の上等を買っておいた。昨晩降った雨が嘘のように良く晴れた朝、快晴を予感させる日陰は濃く、朝日が遮られた部屋の中はひやりと冷たくさえあった。
白く柔らかなシーツと枕、温かな毛布に無造作にくるまり顔をうずめる癖のある先生を起こすときみは気障だと言われた。
今日は何をしようかと砂糖を三つも融かしながら尋ねられ、何をしましょうかと質問で返す。であれば薔薇を見に行こうと僕達は二つ先の駅まで薔薇を見に行った。
とりどりの薔薇が咲き乱れ華やかな芳香に微かに酔い、日が昇る頃にはすっかり暑くなり陽気は汗ばむほど。ソフトクリームを買って二人で木陰で食べた。
「花より団子だ」
つめたい甘味を掬う舌が赤赤しく真っ直ぐ見られなかった。
「これからどうします」
「そうだな」
指先についた溶けた乳液を舐めて先生はにやりと笑った。
「ホテルに行こうか」
残ったコーンを取り落とす。
「あ――んなに、したのに?」
「なんだ、嫌ならいい」
「いえ!あ、いや……でも」
「花より団子、団子より色気だ」
したそうな顔だったからと言われてぐうの音も出ない。ああなんだか露出狂の心持ちだ。この花々を愛でに訪れた人々は、まさか僕たちが頭の中で淫らなことばかり考えているとは思わないだろう。想像と外界があまりに剥離して、その差にぞくぞくと鳥肌が立った。
手近なホテルは安物のベッドで空調が効きすぎていた。風を召しやしないかしらと心配したが直ぐに汗だくになったから、成程この温度なのだなと23℃の冷房に感謝した。
ばかのように射精してばかのように腰を降った。先生もばかだ、僕みたいなのに絆されて。もう逃さないのに、もう逃げられないのに。頭を撫でられてうれしくなった。好意に上限がない。
「また来よう」
先生は古びたラブホテルを気に入ったようだった。曰く、寝具にきちんと糊がかかって清潔だからだそうだ。
「また来ましょう」
二つ先の駅に新しい逢瀬の場所ができた。素晴らしい日曜日の出来事である。

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