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あんたは俺が殺したはずだ

 男を抱きしめた。体温らしきものは、あるようだ、あるらしい、恐らく多分。息を切らせているせいで、これが自分のものなのか相手のものなのか明確に境界線があるにもかかわらず、ぴんとこない。分からない。むかし、遠い昔に抱きしめた身体はこんな匂いをさせなかった。土と埃と血の匂い。鎧の上からでも分かるほど鍛えられた、硬く重い戦士の身体がそこにあった。だと言うのに、俺はそれを抱きしめているのにどうにも心は重く、それは中身がなくて虚しかった。お前は答えなかったし。俺は投げる問いも持たなかった。
 さて、再び。俺は男の身体を抱きしめる。硬くて重い戦士の身体だ。しかしあのときとは違い、時が流れ、お前の身体からは土と埃と血の匂いは、とんと感じられなかった。日向に似た匂い、汗の匂い、そしてこの微かに焦げ臭いような火の気配のする匂いは――煙草の匂いだ。
「きみさあ」
 ヘクトールは、もうこの癖は変えられないということだった。きみさあ、きみ。ちょっと行儀のよい響きだ。
「槍くらい下ろしなよ」
 抱きしめた身体の耳のあたりに鼻先を寄せる。日向に似た匂い、汗の匂い、そして煙草の匂い。
「あんた、まるで生きてるみたいだ」
「死人だよ」
「でも死体じゃねえ」
「うわっ、きみもしかしてオジサンの死体とおかしなことした?」
 別に死体だから一回は許すけどさあ。ぶつくさとヘクトールは抱きしめられたまま、槍を持っていた指先をちょっと擦ったようだった。つまらなそうだった。お前ばかり、お前ばかりそんなふうに。俺はいまお前からする匂いのことさえ、うまく分かることが出来ないでいるのに。
「煙草なんて、吸ってたか」
「そんなもんなかっただろ、酒だってやらなかった」
「俺は……酒は好きだ」
「知ってるよ、帰ったら飲むかい」
「少しだけ」
「そうするといい」
 煙草、いるかい。ヘクトールは言う。ヘクトールが、言う。俺に煙草を。今のお前となら、もしかしたら。

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