ジャンル:暗殺教室 烏イリ お題:俺と喜劇 制限時間:30分 読者:117 人 文字数:1227字 お気に入り:0人

終わりに見た喜劇

人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見ると喜劇だ。そんな言葉がある。
たしかにそれはそうかもしれない、と、おれは時々「同僚」たちを見ながらそう思う。


もとは人間だったというが、今はタコとしか言いようがないフォルムの超生物。
そのフォルムになった来歴はどうやら悲劇に満ち満ちているらしいけれど、気の抜けた姿形である今は、その悲劇をまったく感じさせない能天気さだ。世界の実力者たちが束になってもかなわないあらゆる実力を兼ね備えながら、それらの用途はだいたいとても下らないことばかり。悪巧みをしようと思えばどんな悪いことでも完全犯罪が可能だろうにそれをしない。しばしば調子に乗り、羽目を外し、余計なことをやらかして生徒たちに呆れられる。喜劇だ。その存在は、喜劇でしかない。

肩書きは「世界でも五指には入る、ハニートラップの達人」だった。……だったはずだ。
書類上で語られる「実績」の数々はなんとも華々しく、そのうちのいくつかはなんとなく耳にしたことがあり、たしか迷宮入り扱いをされていたようなものもあった。こんなヤツをいたいけな中学三年生の前に出していいのだろうか——と、上から派遣暗殺者の話を聞いた時は心配したものだ。
だが、その達人技もタコの前ではまったく効果がなかった。色仕掛けは通用したが、最終的な暗殺という目的には結びつかない。最終的にはクラスの(あまり報われない)お色気担当兼、コメディエンヌといったポジションに落ち着いた。おそらく彼女の人生において、こんな扱われ方をしたのは生まれてはじめてだろう。その扱われ方に反発をしながら、時に不服そうにそれを受け入れながらここにいる姿は、おそらく喜劇に見えるのだろう。彼女もさまざまな悲劇を辿った末、今ここにいるようなのだが、普段の彼女からはまったくそれは感じ取れない。


そして、そんな喜劇に満ちた同僚に囲まれているおれも、外から見れば十分に喜劇を構成する役者のひとりに見えるのだろう。
喜劇から距離を置こうと努めながらも、期せずして巻き込まれているいつもの状況を考えると、それは認めざるを得ない。




イリーナは、生徒たちとカフェに寄って行くと言っていた。センセー業は肩こるからダベってくるわ、と言っていたが、海外留学を視野に入れているらしい生徒たちの相談に乗ってやるつもりであることをおれは知っている。先生という肩書きもすっかり板につき、悲劇の住人ではなく喜劇役者として役割をまっとうする楽しさを、彼女は知り始めている。
超生物は、普通の人間がするみたいに手を組んでポキペキと鳴らし、卒業アルバムの編集にかかる、と言った。これから起こることを知ってか知らずか——いや、こいつのことなら薄々感づいてはいるのだろう。それでもヤツは、喜劇役者であることを貫く。

「……教育に良いアルバムにしろよ」


楽しげで調子っぱずれなヤツの鼻歌を背に、おれは教室を出た。
喜劇はおそらく、じきに終わる。

同じジャンルの似た条件の即興二次小説


ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:暗殺教室 烏イリ お題:アルパカの慰め 制限時間:30分 読者:148 人 文字数:1411字 お気に入り:0人
まるで敵のいない野っ原に放り出された草食動物みたいに、クッションを抱えてソファに座り、どこでもない虚空を見つめてぼうっとしているものだから、烏間は思わず心配にな 〈続きを読む〉

からいりくじらの即興 二次小説


ユーザーアイコン
作者:からいりくじら ジャンル:暗殺教室 烏イリ お題:ラストは男祭り! 制限時間:30分 読者:94 人 文字数:1463字 お気に入り:0人
「いやー、やっぱああいう血湧き肉躍る競技は男子の専売だねぇ。超興奮しちゃった!」体育祭の棒倒しが終わり、閉会式も終えて。校庭のパイプ椅子を片付けながら、興奮気味 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:からいりくじら ジャンル:暗殺教室 烏イリ お題:輝く悪 制限時間:30分 読者:93 人 文字数:2080字 お気に入り:0人
「カラスマってさ、この世には絶対的な正義みたいなものがあって、自分は何があってもそっちサイドですって顔をしてること、ない?」あたし、自分を使うオトコの実力を見極 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:からいりくじら ジャンル:暗殺教室 烏イリ お題:元気な故郷 制限時間:30分 読者:83 人 文字数:1965字 お気に入り:0人
殺気を感じて立ち止まると、すぐ横のコンクリートブロックの塀に、ビシッと音を立ててペイント弾が命中した。気付かずそのまま歩いていたらば、ちょうど烏間のこめかみに命 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:からいりくじら ジャンル:暗殺教室 烏イリ お題:進撃の内側 制限時間:30分 読者:108 人 文字数:1929字 お気に入り:0人
「……で? なんだコレは」「なにって、ランジェリー」「おれには紐にしか見えん」「えー。この繊細なレース使いがわかんないなんて、どんだけ朴念仁なのよカラスマぁ」烏 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:からいりくじら ジャンル:暗殺教室 烏イリ お題:悔しい男 制限時間:30分 読者:111 人 文字数:1553字 お気に入り:0人
持ち帰りの仕事がようやくひと段落ついて、烏間がようやくベッドにやってきた時。彼の恋人であるイリーナ・イェラビッチは、いつもの「この衣服には一体どこを保護する目的 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:からいりくじら ジャンル:暗殺教室 烏イリ お題:失敗の食卓 制限時間:30分 読者:99 人 文字数:1699字 お気に入り:0人
熱で浮かされた頭に、おずおずと濡れタオルが乗せられた感触。その心地よさにふっと目を開けると、あまり見ない驚いた顔の烏間がそこにいた。「……すまん。冷たかったか」 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:からいりくじら ジャンル:暗殺教室 烏イリ お題:真実の血液 制限時間:30分 読者:108 人 文字数:1504字 お気に入り:0人
「——時々不思議になるのよねえ」熱心に砂場で「おしろ」を作り続ける娘をぼんやりと眺めながら、木陰でイリーナは呟く。「なにがだ」吹き抜ける風の心地よさに目をつぶり 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:からいりくじら ジャンル:暗殺教室 烏イリ お題:突然の宇宙 制限時間:30分 読者:106 人 文字数:2018字 お気に入り:0人
「ねぇんカラスマ――」「甘えた声を出そうが、ダメなものはダメだ」「……ちっ」先ほどからさんざ「授業なんかかったるい」「やってられない」「そもそも教師なんかやった 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:からいりくじら ジャンル:暗殺教室 烏イリ お題:幼い土地 制限時間:30分 読者:96 人 文字数:1505字 お気に入り:0人
「人を育てる——……か」生徒たちの乗ったバスを見送ったイリーナが、ぽつりと呟いた。「あいつからのアドバイスブックにあった言葉、か」吹けば飛びそうなほどに小さな言 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:からいりくじら ジャンル:暗殺教室 烏イリ お題:俺と霧 制限時間:30分 読者:99 人 文字数:1517字 お気に入り:0人
複雑なようでいて、単純で、だけど複雑。イリーナ・イエラビッチという女は、おれにとってはそうとしか言いようのない性格をしていた。「もー、まぁた雨!? もう雨はいい 〈続きを読む〉