ジャンル:暗殺教室 烏イリ お題:俺と喜劇 制限時間:30分 読者:54 人 文字数:1227字 お気に入り:0人

終わりに見た喜劇

人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見ると喜劇だ。そんな言葉がある。
たしかにそれはそうかもしれない、と、おれは時々「同僚」たちを見ながらそう思う。


もとは人間だったというが、今はタコとしか言いようがないフォルムの超生物。
そのフォルムになった来歴はどうやら悲劇に満ち満ちているらしいけれど、気の抜けた姿形である今は、その悲劇をまったく感じさせない能天気さだ。世界の実力者たちが束になってもかなわないあらゆる実力を兼ね備えながら、それらの用途はだいたいとても下らないことばかり。悪巧みをしようと思えばどんな悪いことでも完全犯罪が可能だろうにそれをしない。しばしば調子に乗り、羽目を外し、余計なことをやらかして生徒たちに呆れられる。喜劇だ。その存在は、喜劇でしかない。

肩書きは「世界でも五指には入る、ハニートラップの達人」だった。……だったはずだ。
書類上で語られる「実績」の数々はなんとも華々しく、そのうちのいくつかはなんとなく耳にしたことがあり、たしか迷宮入り扱いをされていたようなものもあった。こんなヤツをいたいけな中学三年生の前に出していいのだろうか——と、上から派遣暗殺者の話を聞いた時は心配したものだ。
だが、その達人技もタコの前ではまったく効果がなかった。色仕掛けは通用したが、最終的な暗殺という目的には結びつかない。最終的にはクラスの(あまり報われない)お色気担当兼、コメディエンヌといったポジションに落ち着いた。おそらく彼女の人生において、こんな扱われ方をしたのは生まれてはじめてだろう。その扱われ方に反発をしながら、時に不服そうにそれを受け入れながらここにいる姿は、おそらく喜劇に見えるのだろう。彼女もさまざまな悲劇を辿った末、今ここにいるようなのだが、普段の彼女からはまったくそれは感じ取れない。


そして、そんな喜劇に満ちた同僚に囲まれているおれも、外から見れば十分に喜劇を構成する役者のひとりに見えるのだろう。
喜劇から距離を置こうと努めながらも、期せずして巻き込まれているいつもの状況を考えると、それは認めざるを得ない。




イリーナは、生徒たちとカフェに寄って行くと言っていた。センセー業は肩こるからダベってくるわ、と言っていたが、海外留学を視野に入れているらしい生徒たちの相談に乗ってやるつもりであることをおれは知っている。先生という肩書きもすっかり板につき、悲劇の住人ではなく喜劇役者として役割をまっとうする楽しさを、彼女は知り始めている。
超生物は、普通の人間がするみたいに手を組んでポキペキと鳴らし、卒業アルバムの編集にかかる、と言った。これから起こることを知ってか知らずか——いや、こいつのことなら薄々感づいてはいるのだろう。それでもヤツは、喜劇役者であることを貫く。

「……教育に良いアルバムにしろよ」


楽しげで調子っぱずれなヤツの鼻歌を背に、おれは教室を出た。
喜劇はおそらく、じきに終わる。

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