ジャンル:メギド72 お題:群馬の朝 制限時間:30分 読者:93 人 文字数:1807字 お気に入り:0人

アジトで馬の世話をする話

 ソロモン一行がようやく、シバから遠回しに依頼された「大樹ユグドラシル」を討伐し終えたころのことである。戦いが終わって一息ついてみると、倒れた木の近くで何か物音がした。
「しまった、誰か巻き込んじまったか?」
「まさか……ここらに人はいないはずだ、こんなところには……いたらとっくに逃げてるよ」
 茂みを掻き分けると、たしかに生き物がいた。しかし人ではなかった。小柄な馬が後ろ脚を引きずり、逃げることもできずにうずくまっているのだった。距離をとり、しばらく見守っている。
「この子、ケガしてるみたい」
 ウェパルが水を出してやると、ゆっくりながらも飲んだ。ケガをしているのは脚だけのようで、先ほどの物音も、驚いて立てた物音だけのようだった。
「なあ、これ、アジトに連れて帰ったらダメかな……」
「ここで死ぬというのならそれもこの馬の運命だ」
「でも、置いていくっていうのもなあ……」
「あたし、お世話ちゃんとするする!」
「お前、信用ならないぞ!」
 シャックスにすかさずマルファスが異議をとなえる。
「じゃあここにおいてくおいてく?」
「オマエ、それは……」
 マルファスは言葉に詰まった。クールな見かけ以上に優しい少年だ。
「しかしだな」
 ブネは渋ったが、アジトには設備がない、という言い訳は適切ではなかった。アジトには、商人のキャラバンが立ち寄るための設備もあった。馬は長くは走れない。拠点には馬をつないでおくくらいの設備は整っていた。
「それじゃあ、元気になるまで面倒を見よう。なんか、置いていくのは見殺しにするみたいで悪いし……余裕もあるし、馬なら、ほら、役に立つかもしれないし」
「それもまた運命か」
 アガレスはふっと斧を下ろした。馬が立ち上がろうとして、何度も足元のボロボロの鞍を蹴った。

「おかえり!」と出迎えたのが偶然にもモラクスとアンドラスだったので、馬を連れて帰るのにはまだひと悶着あった。肉だすき焼きだ晩飯だと嬉しがるモラクスと、骨格標本を作りたいと述べるアンドラスである。
「ちぇっ、なんだ、食べるんじゃねえのかよ」
「死んだら食べてもいいんじゃねえか」
「ちょっと」
 ウェパルに制されて、ブネが慌てて口をつぐむ。
「うん、見かけ以上に浅い傷だ。また走れるようになりそうだよ」
「そうか、よかった」
 丁寧に傷口を診たアンドラスが請け負ったので、ソロモンたちはほっとした。

「これだけ人を恐れないところを見ると、どっかの軍人の馬だったんだろう。良い馬だな、大将」
 イポスが馬の手綱を引き、器用に厩舎へと誘導していく。ケガもずいぶんよくなったし、人にもだいぶ慣れてきた。
 情がうつらないようにと、名前は付けないことになった。なったというのは、つまり、おのおのに任せる、ということになったのと同義で、ゆえにみんな、メギドたちはその生き物のことを、好きな名前で呼んでいる。
 ガミジンが「オイ」と呼ぶのだが、なぜかコランが嫌がった。遠い知り合いに、そんな名前の者がいるらしい。というわけで、もっぱら「テメエ」とか「ソレ」になった。
 一部のメギドはもっと凝った名前を、ということで、プルソンは「ハイランド」と名付けようとしたし、マルバスが提案したのは「マリアンヌ」だったが、栗毛の馬はなぜかガミジンの呼ぶ、シンプルな2音を好むのだった。もっとも、シャックスが呼ぶときは、「ソレソレ」だが。
 ガープは名前を付けない派だが、口笛で呼ぶ。ガープの口笛をしっかり聞き分け、アジト周辺で草を食んでいる馬は即座に戻ってくる。
「どうやら、ガープになついてるね」
 バルバドスの言葉に返事はしなかったが、ガープが豪快に水をかけてやった。馬は心地よさそうに目を細めた。バルバドスが馬の毛をすいてやる。最初は茶色い栗毛に見えた馬は、綺麗に整えてみれば、割とでたらめなぶち模様をしていた。
「いつか仲間のところに戻れる時が来るだろうか」
「ムリだろう、はぐれてしまってはな」
「うわっ」
 馬がぷるぷると身を震わせて水滴を飛ばす。
「キャラバンが来たら聞いてみるとしよう。この馬の居場所に心当たりがないかどうか」
「そうだな」
「元の群れの中でなくたって、それなりに上手くやっていけると思わないかい」
「それは、そうだ」
 いつの間にかごった返したアジトとその様子を重ね合わせたのか、ふっと笑った。

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