ジャンル:暗殺教室 烏イリ お題:君の雲 制限時間:30分 読者:97 人 文字数:1404字 お気に入り:0人

台風がくる

「ねえ。台風が来るらしいわよ」
台風由来らしい強い風が吹き込んできていた窓を閉め、カーテンも一緒に閉めながらイリーナがつぶやいた。
「——ああ、たしかに夕方の雲の流れがとても早かったな」
「天気予報では明日は一日雨だって」
「ふうん」
一直線にベッドへとやってきたイリーナがぼすん、と腰を下ろすと、烏間はつまらなそうに持っていた書類をサイドボードの上に置いた。
「……なら、明日の外出はナシか」
「えー。水族館いきたかったー」
ベッドの上に寝そべる烏間ににじり寄ると、イリーナは烏間の足の間にぽすんと座る。烏間を座椅子扱いするかのように、そのまま背中をぐんと預けた。
「屋外展示もある水族館だから、雨だとおそらくつまらんぞ。台風接近中ならそもそも開館しないかもしれない」
「ちぇー。ひさしぶりのお出かけの予定だったのにー」
ぺちぺち、と無造作に烏間の太ももを叩く。不満を表現しているらしい。
「天候が天候なんだから、しょうがないだろ」
「ちぇー」
そのままハーフパンツの隙間から手のひらを潜り込ませようとしたので、烏間はその手首をやんわりと掴んで、お腹の前でひとまとめにする。
「じゃあ、ジムでも行くか」
「カラスマとジム行くと、あんたえんえん走ってるか、えんえん泳いでるか、えんえん筋トレマシン使ってるかで、あたしはつまんないんだもん。せめて室内プール」
「お前この前、下半身に肉がついたって悲鳴あげてたじゃないか。トレーニングメニュー組んでやるが」
「もう! そーいうとこほんっとデリカシーゼロ!」
そう言ってイリーナがぎゅうっと烏間の手の甲をつねると、烏間はそう痛くもなさそうにいて、とつぶやいた。
「……悪かった。冗談だ」
「……」
「……おい、イリーナ?」
「……」
顎に手を添え、ゆっくりこちらを向かせてみると、イリーナはあからさまに頬を膨らませ、不満を表現してみせた。その顔があまりにもあからさまな表情だったので、烏間は思わず吹き出してしまう。
「笑い事じゃないっ」
「すまん」
もう一度イリーナは烏間の手の甲をつねる。今度は烏間はいて、とは言わなかった。


「……結局、明日はどうする? ショッピングモールにでも行くか?」
「んーん」
「じゃあ、TSUTAYAで映画でも借りるか」
「それでもなくて」
烏間の腕の中でくるんと体を反転させると、イリーナは烏間の首に両腕を回し、妖艶に微笑んだ。ベッドサイドにあるランプに照らされる赤い唇が、蠱惑的なカーブを描く。
「たまには、引きこもってみるのもいいかもしれないわね」
「ほう?」
「おうちで、二人で出来る、めちゃくちゃ汗をかく『運動』の、トレーニングに付き合ってほしいんだけど」
「……なるほど」
さっきまで不満顔をしていた彼女が、もう笑っている。彼女の機嫌は、台風接近中の空模様よりも変わりやすいのかもしれない。
イリーナの思惑に気づいた烏間がイリーナの腰に手を添えると、笑顔を形取った唇が烏間の唇に音を立ててキスをした。
「で? これはつまり、これから前哨戦を始めるつもりか?」
「もうとっくに12時回ってる。つまりもう『明日』はきてるのよ。——トレーニング開始してくれるかしら、『コーチ』」

烏間もにやりと笑って、イリーナの背中に手のひらを滑らす。ひゃ、という悲鳴がベッドルームに響いた。
「じゃあ、さっそくトレーニング開始といくか」

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