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十を巡りて

プロとして、何ができるか。
『嘘』をついてまでも、皆に夢を与える仕事?
その『嘘』は、『夢』なのか。
ずっと、自分の中で疑問を持っていた。


「ふう。」


ペンを置いて一息。仕送りにそっと書いた手紙を入れて、封をする。
勿論、スマホでも連絡は取りあえるのだけど、手紙っていう特別感がまた、素直になれる。
弟や妹たちも思春期で、なかなか言い出せないこともあるし。
それを、そっと手紙だけで教えてくれるのは何だか愛しい。


「龍、終わったか?」

「あ、あぁ。楽。待っていてくれたのかい?」

「事務所でなんか書き物してるだなんて珍しいから、様子を見てたんだよ。」


普段は家で書いているけれど、ちょうど仕事が立て込んでいたから、帰れる日を見るよりは、
事務所のほうが確実かと思って、今回はそうしたのだが、気を遣わせたみたいだ。


「家族に手紙を書いていたんだよ。」

「なるほどな。だから上機嫌だったわけだ。」


得心して頷く楽。
何気ない仕草でもかっこよく見えるのだから羨ましい。
俺は、気合を入れて「カッコイイ」っていうのを作らないとならないから。


「楽、龍は?」


天の声が入口から飛んでくる。
この後は少し遠方でのロケが入っているから、きっと車で待っていたんだろう。


「ごめん、天。今行くから。」

「もうそろそろ出発するよ。」


最年少だけど一番クールに、凛としていて、さらにプロ意識の高い天。
ただ、俺からしてみると可愛い弟のような存在で。
本人として不本意なのかもしれないけど、よしよしと頭をなでたくなってくる。


「お願いします。」


事務所前に付けてくれたロケバスに乗り込む時にも、目ざといファンが黄色い声援をくれる。
天はニコッと笑って手を振り、楽はクールに反応せず車へ。
俺は微笑みかけるくらいで、車に乗り込む。
車の後部座席はスモークとカーテンで見えないから、天はすっといつもの調子。


「相変わらずの猫っかぶりだな。」

「…何、ファンに愛想振りまくのは当然でしょ?アイドルなんだし。楽もやってみたら?」

「楽のニコニコなファンサ、俺も見てみたいなあ。」


楽だって笑うと可愛らしくなるんだから、やってみてもいいのに。
そう思ったのだけど、楽は渋面を作る。


「龍はファンサ苦手でしょ。」


ぴたりと天が言い当てるので、つい俺も苦い顔になる。


「それは…その…。」

「何もしてないのに、お姉さま方に囲まれてっからな、龍は。ファンサなんてしたら身動きとれねえだろ。」


確かにそうなのだ。
ファンの熱量は凄くて、ぐいぐい来られてしまうと俺はどうしていいのかわからなくなってしまう。
プロの、アイドルとしては、ファンサはするべきなんだろうけど…。


「どうしても、苦手なんだよね…。」

「それでいいんじゃねえの?龍は。うちのセンターが龍の分まで頑張ってくれるってよ。」

「えっ。」


話を振られた方に目を向けると、やれやれ、と呆れた様子だけど、


「ま、得意だから龍の分はいいけど。楽の分はやらないからそこは頑張ってよね。」

「俺だってそれなりにやってるだろ。」

「もっと本気出して。」


そうだ、俺は知ったはずなのに。
俺は一人じゃなくて、かけがえのないメンバーがいるってことを。
なんだか急に、愛おしくなって、2人の頭を撫でたら、見事に怒られたけど。

TRIGGERで、俺は上を目指していく。

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