ジャンル:バハムートラグーン お題:希望の交わり 制限時間:30分 読者:34 人 文字数:1079字 お気に入り:0人

希望の交わり ※未完

「み、水……」
縋るように伸ばした手は、ただ空しく砂を握っただけだった。

砂のラグーン、ダフィラ。その首都からやや離れた交易のために発達した町で、その男は生まれ育った。
裕福な両親の元に生まれた男には、大商人として成功するために彼らが引いてくれた轍を歩いていくだけの、約束された将来があった。
物に困ったこともなく、むしろ貧乏人たちの困った顔を見ていることが、彼にとっての密かな楽しみだった。
機械技術の発達したベロスには、人の姿や風景を切り取ったように写しだせる機械があるのだという。
それを耳にしたときは喉から手がでるほど欲しかったが、扱いの難しいものらしくダフィラの気候には合わないと聞いたときの落胆ぶりは、周囲の商売仲間に話のネタにされるほどだったらしい。

そんな彼が、今は輝く金貨も輝かしい人脈も役に立たない砂漠に放りだされていた。
「くそ……。私はいつまでここにいればいいのだ」
言葉と一緒に口の中の砂を吐き出して、彼は忌々しく傍らの鞄を見下ろした。
その中に入っているのはすっかり空になった皮ぶくろと、目にも美しい大粒の宝石たちだった。
これのせいで彼は、自分から快適な豪邸を抜け出さざるを得なくなったといっても過言ではなかった。

ことは数日前。
商人として町では有名な彼が、同時に行っていた「仕事」はあまり表だって言えないことだった。
つまりは、人身売買。
仕事の斡旋という名目こそ間違ってはいなかったが、金を払えない貧民の仕事の斡旋を行う代わりに、質として安定した価値のある宝石を預かる。斡旋が終わったら、手数料と引き換えに宝石を引き渡すのだ。
全うに見えるが、その「斡旋」の内容が男も口外したくない内容のものばかりであり、実質男は斡旋元への僅かな謝礼を除いたほとんどを自分の懐に入れていたわけだった。

商人として成功を収め、裏家業でたっぷり資金を溜め込んだ男には、店を首都に開くという夢があった。
その夢も手に届くであろう、そんな順風満帆な彼の耳に、思わず疑うような噂が飛び込んできた。

「金を溜め込んだ商人の元にだけやってくる、暗殺者がいるらしい――。」

初めは貧民の作り話だろうと鼻で笑い飛ばした。わざと仲間にも話して共に笑ったくらいだ。
だが、その仲間のうちの一人が実際に無残な姿で発見されたとき、男は考えを改めなければならなかった。
情報網を使い、必至に暗殺者の正体を追った。残された痕跡がないかと目を光らせた。
それでも何も残っていなかった。せいぜい被害者に残された傷跡が、鋭いナイフによるものだと分かったくらいだ。

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