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百花の魁

猪突猛進だって、昔からよく言われていた。
でも、オレはあの時の決断を後悔なんてしていないし、
今こうして見ている景色は、あの時の決断がなければ絶対なかったものだから。


「ふーっ、ユキ、お疲れー。」

「お疲れ。モモ。」


穏やかな声で返してくれるオレの相棒、ユキは今日も涼しげなイケメン。
あ、でもステージ後で汗かいてるんだけど、なんていうか、爽やかっていうか。


「モモ、そのまま寝転がったらまた怒られるよ?」

「っとぉ、そうだった。こないだオカリンにしわしわなRe:valeは嫌でしょう、って言われたんだった。」


慌ててソファから起き上がり、衣装をハンガーへ戻す。
いくらクリーニングするって言っても、濡れた後にしわがついちゃうと戻りにくいとか何とかで
オレたちのマネージャー、オカリンから怖い笑顔で怒られたんだった。


「まぁ、僕らがおじいさんになったらしわしわだろうけどね。」

「いいね!おじいちゃんアイドル。歌って踊るおじいちゃんとかかっこよすぎでしょー!」

「え、それ、踊れるの?」

「車いすかなんかで!」

「ぶはっ。」


思い切り噴き出して肩を震わせるユキ。クールに見えて実はゲラなんだよね。


「おじいちゃんになるまでアイドル出来たら幸せだよなぁ。」


ぽつん、と零れる言葉。
オレが必死に頼み込んで、縋って繋いだRe:valeの5年。
それは長いようで、全然短くて。
大好きなRe:valeを、無くしたくない一心で、駆け抜けた。

でも、いつか俺はRe:valeを去らなくちゃならない。
だって俺は「繋ぎ」だって。
そう思っていた。
そして、いつかそれはすごく重たくて、飲み込めない塊となって、オレの喉を圧し潰した。
こんなに大好きなRe:valeを。
ユキの隣で歌うことを。
『取り上げられる』のが、凄く怖かったんだ。


「そうね。」


ユキが小さく同意の言葉を告げる。


「モモとなら、出来るんじゃない?」

「へっ?」

「モモは、僕を乗せる天才だから。」


バチン、とファンサで見せるようなウインクをオレにして見せるユキ。
すっげー様になるのと、その優しさへの感謝を込めて、オレはいつものセリフ。


「ユキぃぃ…イケメンー…。」

「うん、知ってる。」


ユキは、オレを必要だって言ってくれた。
オレとだからこそ、Re:valeとしてやってこれたんだって。
あの時、やめないでくれと千さんに縋ったいちファンとしてのオレは、そこにはもうなかったんだ。
Re:valeの、百が。
ユキと、ずっと一緒にRe:valeとしてやって行きたいと思っていたことに、気づいた時に。
喉にあった大きな重い塊は、すうっと、消えていった。


「でもさ、おじいちゃんで夫婦ネタみたいなのウケるかな。」

「いいんじゃない?そのギャップ。」

「そっかなー。今度後輩たちに聞いてみよー。」

「後輩って。」

「ん?TRIGGERとアイドリッシュセブン。」


聞いた時の二組の反応を想像して、オレ達は共通の見解に至って
思いっきり笑い転げて。
そのあと、オカリンが笑顔に青筋を浮かべるっていう器用なシーンを目撃することになる。


オレの厚かましい思いに押し切られながらも、応えてくれたユキ。
オレ達で、次第に新しいRe:valeを作っていけたこと。
可愛い後輩たちに、目指すべき道標を作れること。
ユキと共にいられたから、Re:valeだから、出来たこと。


まだまだ、後輩たちに抜かされるような事にならないように。
オレは、Re:valeとして。
もっともっと、高みを目指していくんだ。
猪突猛進で、だけど、ちゃんとユキと一緒に。

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