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子どものように甘いキスは大人の味

その背中は、故郷のお父さんを思い出すほどに大きい。
だけど振り向くと、ボクよりも無邪気な笑顔を向けて、子どものようなイタズラをして来る。
やっぱりボクよりもずっと大人なんだと思うと同時に、可愛らしい…と言ったらなんだけど、そんな一面もあったりして。
「腹減ったんで、そろそろメシにしません?」
「さーんせーい!」
ボクが頷くとルキは大きく手を上げ、全身で喜んでいた。ロスは、うきうきした様子で食事の支度を始める。
「そういえば、前の街でお菓子買ってきたんだったよね。今食べる?」
「わたしはね、このクッキーにするー!」
「じゃあ、ボクは…チョコもらおうかな。ルキも食べる?」
ロスはさっさとポテトチップスを取って、一人でバリバリと食べ始めた。…チョコを食べてると塩気のあるものが欲しくなるけど、ちょうだい、と言える勇気はなかった。絶対何か言われるし。
お菓子を食べながら、軽くスープを作ることにした。近くの野草や野菜を入れて、余っていた缶詰の肉を少々加えて、コンソメで煮込む。簡単だけどとっても美味しかった。
ロスはすぐに食べ終わり、川に手を洗いに行った。ボクも鍋を洗うために、チョコを一粒だけ口に放り投げて、付いて行く。
付かず離れずの場所でボクはしゃがみこむ。口をもぐもぐしながら川の水で鍋の汚れを取っていると、手を濡らしたロスが隣にやってきた。
「…俺にも欲しかったです」
「…え?」
「チョコ」
ちょっと拗ねたような顔で、ボクを見ていた。
「…っ」
そして唇がそっと触れ、ボクは目を見開いた。
「…これでまあ、許してあげますよ」
ロスは、ニヤッと笑って立ち上がって、ルキのいる方向へ行ってしまった。
ボクは、思わず体の力が抜けて行くのを感じた。
「………ほんと、わかんないやつ……」
その大きな背中は、二度と振り返らなかった。

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