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あらしのよるに

あらしのよるに

「おーすげー風」

付けっ放しのテレビからは、ひたすら台風情報が流れている。
不要な外出は控えてくださいってね。
でも不要な外出ってどこからどこまでなんだろうな。

暇すぎて死にそうだから、漫画買いに行くのは不要な外出だろうか。
不要な外出だろうな。
てか本屋さんやってなさそうだし…

ぼんやりと窓の外を見ていると、ドタドタと足音が聞こえてきた。


「イバラー!絵本読んでやろうか?!」

「えっ、急にどうした?いらないんだけど」

「いーじゃん!このシリーズ新しく買ったんだよー」

自分が読みたいだけじゃねーか。
まぁ、暇なのは事実だから付き合ってやるか。

「…しゃーねーなー」

「よし!」

と、クッションを集めて胡座をかく。
そしてその間に俺を座らせようとする。

こいつ!

だが絵本を読むのに、この配置が最適なんだと言うファントムに押し切られ渋々座る。

「よし!じゃあ読むぞー、あらしのよるに…」

………………………………


「…緑の森があったんだよ、グスッ、ねえ、緑の森が…」

雨と風と馬鹿の鼻水を啜る音をBGMに、物語は終わろうとしていた、その時だった。

バチンッ!

「うわ、暗っ」

停電!?

「おい、懐中電灯は?」

「あー、二階の棚の上だ」

この暗闇の中階段を登らなきゃいけないのか。

仕方ない。

「よっ、と」

ちょっと棚を蹴飛ばしたが、机の上のスマホが取れた。

スマホのバックライトをつける。
電池食うからあんま持たないだろうけど。

「サンキューイバラ」

「暗くなると一気にヤバそうになるな」

「怖いか?」

「別に?」

「可愛くねー!」

絵本と、クッションと、さっき棚から落ちて散らばったメモ、そして愉快そうなファントムの顔が照らし出される。

もう読む気もないだろうに、俺を包むみたいに座らせる。
まるで俺を守るみたいに。
何となく悔しい気がする。
別にこいつの在り方はそうなんだろうけど。
でもやっぱり悔しい。

「ヤギはさ、守られて幸せだったのかな」

「ん?」

「さっきの絵本。結局オオカミがヤギ守って死んだだろ」

「死んだとは書かれてねーぞ?」

「雪崩に巻き込まれてんじゃん」

強い者が弱い者を守って死ぬのなら、俺は弱い奴になんかなりたくない。

「…俺がヤギなら自分の知らないとこで、自分を守って死ぬなんて御免だ」

顔が見えないはずなのに、その時ファントムが微笑んだのがわかった気がした。

「…わかった俺はお前の知らないとこで死なないようにするよ」

「俺はヤギじゃねーけどな」

「うわ、可愛くねー」

なら、二匹のオオカミだ。
そう言って頭を撫でられる。

そうだといい。
2人で肩を並べて戦うような。
でもまだだ。
まだ俺はそのレベルじゃない。
そのくらいはわかっているつもりだ。

メモ紙を丸めて強く握る。
手の中で悔しい音が鳴った。

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