ジャンル:人狼ジャッジメント お題:来年の食事 制限時間:1時間 読者:44 人 文字数:1959字 お気に入り:0人

愚か者は遠い先の会合を約束する


【ロデマイ】

来年の話をするとオニが笑うという。オニ、とは極東の国にいるとされる悪魔の一種で、冥府に住んでいることもあるらしい。なぜ来年の話をすればそのオニが笑うのかよくはわからないが、そういうものなのだ。だから、悪魔ではないにしろ、その一部に連なるものとして、笑ってやるべきなのだ。

ここを出たらさあ。ガタガタと木製の窓枠鳴らす吹雪を、ガラス越しに見やりながら、マイクが心ここに在らず、といった調子で口を開く。ここを出たら、何したい?シフォンケーキの方がまだマシなくらい、中身のない話だ。ここを出られたら、なんてたらればの夢想をするより、ここを出るために、誰を殺すのが最短ルートなのかの話をした方がよほど建設的だ。当初からこのゲームに嫌悪感を示していた彼のことだから、昼の議論が終わった今でさえそんな血生臭い話をするのが、嫌なのかもしれない。

「ここを出たら、ねぇ……」

ロディは人狼である。目の前のマイクはもちろん知るよしも無い。ロディにとっても、こんな雪山の屋敷に迷い込んだのは飛んだ不運だった。ここを出たらすぐさま山を降りて、途中旅人とすれ違えばそれを食って遠くの村へ行くし、そうで無いなら近くの村でまたここと似たような事をするだけだ。……とは、流石に言えないから、言葉を濁す。

「やっぱり早くこの山から降りたいかな。近くに村があるか、人がいるといいんだけど」

「そうか」

そうか、って。聞くだけ聞いておきながら、マイクの反応は極端に薄い。当たり障りのない、つまらない返答であるとは重々ロディも承知していたが、ついムッとして棘のある喋り方になる。

「マイクは?君はここを出たら何したいの」

「俺は……」

相変わらず口調はぼんやりとしていて、視線はカーテンの開いた窓に釘付けだ。吹雪の様子なんて、特段見つめたところで面白くもなんともないだろうに。

「ロディ、お前、どこの生まれ?」

「え、僕は生まれ自体は海の向こうの辺鄙なところだから、言っても絶対わからないよ」

生まれなんて知らない。物心ついた時から、もっと言えば生まれつきロディは人狼で、その頃から森から村ヘ、村から森へと定住の地無く移動し続けていた。両親は狼にだいぶ寄った方の人狼で、人里に定住する事を好まなかったのだ。咄嗟に誤魔化したものの、内心は焦りでいっぱいだった。

「それでもいいから。教えてくれ」

「どうして?君のしたい事と、僕の出身地に、何の関係があるの」

背を嫌な汗が伝う。こんな、こんなくだらない与太話で正体がバレるなんて、絶対に嫌だ。あってはならないことだ。

「……俺は、これが終わったら、死んだみんなの故郷に行って、この事を伝えるつもりだ」

「あなたの家族は架空の存在だと思われた人狼に食い殺されました。って?信じてもらえるかもわからないのに?」

「半分は、確かに、狼に食い殺された。でも、もう半分は、俺が殺した。俺が、死ねと言って処刑したんだ。だから、伝えなきゃいけない」

よくよく見れば、マイクの肩は強張っていて、机に隠れた両手がきつく握りしめられているだろうことを容易く想像させた。彼はずっと外が気になっていたのではなかった。ロディと目を合わせられないから、ひたすら窓へ視線を固定させていたのだ。きっと、全員に聞いて回っていたのだろう。今まで処刑してきた者にも。

「下手したら、一番最初の村で吊るし上げられて死ぬよ」

「それでもいい。いや、簡単に死んでやるつもりはないけど、俺が死ぬ理由が、俺の殺した人たちの分の報復なら、それは、仕方ないことだ」

「そんな、どれだけかかるかも、生きて完遂できるかもわからないことに、これからの人生を費やす気?」

「それだけのことをしてるんだよ。何人もの、これからを奪ったんだ。じゃなきゃ、償えない」

毎晩、殺した相手の魂の色を見る。それが無実の白だった時の絶望が、年若い彼へ色濃い影を落としている。食うか駆除されるかの生活が常だったロディと違い、まともな人間としての生を謳歌していたマイクには、あまりに重い責任だった。そうさせている一因だということに、痛む胸が全く無いと言えば嘘になる。だから、笑ってやる事にした。

「あは、あははは」

「な、なんだよ」

あはははははは。多少作り笑いめいたところはあるが、疲弊している彼にはわかるまい。
極東の言葉に、来年の話をするとオニが笑う。というものがある。オニも人狼も、バケモノであるという点では大して変わりはしないだろう。来年どころか、一生の話をする馬鹿者を笑う。見ず知らずの、ただ運がなかった連中に縛られる彼を笑う。回りくどい人外の密告に、気付いて欲しいとほんの少し願ってしまう己を、笑う。

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