ジャンル:主役は我々だ! お題:振り向けばそこに出会い 必須要素:1000字以上 制限時間:4時間 読者:328 人 文字数:2613字 お気に入り:0人
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蝶と脅威






「ブゥゥゥン!」
無邪気な声が聞こえる。それはお気に入りの飛行機を持って庭をかけるような幼い子供の声……などでは決してなく、背にエリトラをつけて屋上から滑空してきた低い男性の声。
この声のあとには必ず誰かしらの悲鳴が響き渡る。声の主は誰かをおどかすためにわざわざ屋上に登りエリトラをつけ、花火を持って獲物の真後ろに一直線に向かっていく。声が聞こえて振り向いた頃には緑の悪魔がこちらをみて邪悪な笑みを浮かべているのだ、そりゃ叫びたくもなる。
さて今日は…
「格好いい!!!!」
……前言撤回、この世に絶対という言葉は存在しない。今回彼が舞い降りた先には我らが総統がいらっしゃったようだ。
総統はこの襲撃を見かけるたびに格好いいと子供のようにはしゃいでいる。声の主にとって驚いてくれないのはつまらないのか、はしゃぐだけの総統をターゲットにするのは滅多にない。今日は一体どういう風の吹き回しかと、本に向けていた目を、声の聞こえた中庭へと滑らせる。
ちょうど中庭の中心辺りで談笑している3人の人影を見つけた。襲撃した本人と、はしゃぐ総統、そして総統のそばで呆れたように2人を見ている書記長。
書記長もいたのか、と少々驚く。しかし彼も驚かないうちの一人、声をあげなくとも不思議はない。なにせあの緑の悪魔とは散々対決して空を舞う姿をみているのだから。

3人は少し談笑したあと、書記長が総統の背を押してその場を離れていった。お忙しい方だ、このあとも用事が詰まっているのだろう。しかし書記長の表情に焦りはなく、むしろどこか安心しているようだった。
「エミさんなにしとん?」
「うわぁっ!?」
総統と書記長の行方を見守っていたため、間近に来ていた彼に気づかなかった。声をかけられ驚いてそちらを見れば、彼はキョトンとしたあと面白そうに笑った。背負ったエリトラが彼の服の色を反射させて、キラキラと緑に輝きその笑顔を際立たせた。
「驚きすぎちゃう?さっきまで見てたやん。」
俺らのこと、といいながらエリトラを外し、窓枠に手をついて軽く飛び越え私のいる部屋へと入ってきた。
「気づいてましたか…。」
すぐ近くに扉があるのにと思いながら窓から離れ、彼のために紅茶を淹れにいく。
その間に勝手知ったようにソファに座る彼を見て、先ほどの疑問が浮上し直した。
「そういえば、あの人を狙うの珍しいですね。驚いてくれないと言っていたのに。」
紅茶を彼の前のテーブルに置きながら言い、自分も彼の正面にあるソファに座る。彼はカップを取って紅茶を一口飲み、ほうと息をついた。
「いや、アイツ最近調子悪いって言っててん。トントンがな。」
彼の言葉を聞いて目を丸くする。体調不良とは聞いていないし、先ほどみたときもそんな様子は見られなかった。忙しく休んでいる暇がないと総統が判断したときは体調不良を隠すこともあるが、長い付き合いである書記長にすぐにバレて強制睡眠をさせられている。そして休んでいる総統の分の仕事を書記長がこなすため、どちらかというと山場を越えたとき瀕死になっているのは書記長のほうだ。
「体調でも崩されたんですか?」
暫しの思案のあとそう聞いた私を、ちらりとフードの下に覗く目で見た彼は、いいやと首を横に振る。
「そーいうんやないねん。ほら、最近上手くいってへんことあったやろ?あーいうのでこう…メンタル?ブレイク?」
そう言いながら彼は両手をあげ胸の前でハートを作り、ぱきっと二つに割ってみせた。
あの総統がメンタルブレイク?まさか、ともう一度驚いたあと、はっと気付く。
「…では先ほどのは励ましの…?」
「…………まぁ。」
総統が喜ぶことを知っている彼は、落ち込んだ総統を励まそうと滅多に狙わない総統めがけて飛んで見せたのだ。気恥ずかしいのか顔をそらして頬を掻く彼に、思わず笑みが溢れてしまう。
「……なに笑ってんねん」
「いいえ別に?」
「別にやないやん!」
ガタガタとソファを揺らす彼に笑い、まぁまぁと諌めながら紅茶の入ったカップを置く。
「ならそろそろ忙しくなりそうですねぇ。今度は前線でなければいいんですけど…。」
総統が調子を取り戻したのであれば、近々どこかに戦争をふっかけるであろう。一般兵の士気向上のために、毎回数人のメンバーは前線へと送られる。戦況にあわせて総統がそのメンバーを選ぶのだが、私は戦闘はあまり得意ではない。その旨を伝えても聞き入れられることは、滅多にないのだが…。
「次はエミさん俺と前線やで!ドライバーしてもらうってさっき言うてたし。」
「はっ!?嘘でしょう!?言ったじゃないですか私3流だって!」
「俺が1流やからあわせて4流や!」
「4流ならば!…じゃなくって!」
私の必死の言葉にケタケタといつもと変わらない顔で笑っている。そういえば出会った頃はこんな風に気兼ねなく言い合ったりはしなかったな、と考えるもそれどころではなく、その思考はすぐにかき消えた。



「ブゥゥゥン!」
遥か下の中庭を歩く人物に狙いを定め、恐れることなく屋上から空へと飛び出す。タンと軽く地面を蹴って飛び出すと一瞬上へ向かって体が浮くが、すぐに重力に引っ張られて下へと落ちていく。エリトラを広げると羽は風を受け、落下速度が緩くなった。男は慣れたように身と羽を動かしてコースを調整し、狙った男の真後ろに飛んでいく。
「チーーーーーッス!」
鞘に入ったままのナイフを片手に、男の背後をとると声高らかに叫んだ。
「!?えっ、あっ、うわぁっ!」
肩を大きく跳ねさせて茶色の髪を揺らし、こちらを振り返ってとても驚いた顔をする男を見て、男はいつもの笑みが浮かばなかった。
いつも狙う一般兵とは確実に違うその男の何かに、笑うことができなかった。
そして狙われた男も、目の前の男から目を離さないでいた。恐ろしいと感じたのは一瞬で、空の青を背景に、目の前に輝く緑は男にとって心を打つ綺麗さだった。
これはきっとなにか、特別な出会いである。お互いはお互いの知らぬ心のうちで、そう確信した。


──1流と3流が、4流になる日はすぐそこまで迫っているのを、まだ誰も……
「なぁトントン。この間入った教授、欲しいと思わないか?」
「………無理矢理はやめぇよ。」
「ゾムと合わせたら完璧だゾ」
「聞いとるんか!?」
…我らが総統以外には、まだ誰も知らない。

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