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午前五時の空は何色



※年明けと遊矢の話。

一月一日。元旦。
遊矢はリビングに置かれたコタツの中で目を覚ました。毎年恒例の歌番組を見終わった後の記憶がないことから、すぐに寝入ってしまったのだろう。
コタツから出て背伸びをする。本来寝るべきではないところで横になっていたせいか体のあちこちが痛む。

――もう少し夜更かししたかったのにな、せっかくの年越しだったのに。
時計を見るとまだ午前五時を少し過ぎたくらいだ。いつもだったらまだベッドの中で安眠を貪っている所だ。
せっかくだから年が変わって数時間の空を見たい、そう思った遊矢は愛用の灰色のパジャマから冬用のコートを着込む。
「このくらいの時間なら誰も起きてこないだろうし、柚子もまだ夢の中だよ……多分」
そんな言い訳を一人呟く。そして母に気づかれないよう静かにこっそりと玄関から外に出た。

遊矢はまだ明けきらない薄い水色の空を見上げぶるりと身を震わせた。
吐く息は白く空気に溶け込んでいく。
「明け方の空って綺麗だよなぁ……」
日はまだ昇らず、物音ひとつ立たない。そして少し歩いてみても誰ともすれ違わないし、車もさっきから一台も通らない。
世界に自分一人だけのような気分になり、遊矢は急に不安になってきた。

堪らず持ってきたデュエルディスクの通信記録を見る。するとそこには未読のメッセージが数件残されていた。
柚子、権現坂、塾長…年明けとともにメッセージを残してくれていたのだろう。自分は今の今まで気づかなかったが。
「う、うわ……ごめん、本当に」
特に一番乗りでメッセージを残していてくれた彼女に対して申し訳ない気持ちでいっぱいだった。今頃怒っているだろうか、傷ついているだろうか。
大急ぎでメッセージを返そうとした時、右肩を二度叩かれる。

「ひっ、ぎゃぁっ!?」
「ちょっと、なんて声だすのよ遊矢!」
聞き覚えのある声。家族を除いて誰よりも長い付き合いの、遊矢の幼馴染。
「ゆ、柚子かよ……心臓止まるかと思った」
「追いかけてきたの。こんな時間にふらふらどこかに歩いていくから心配で……」
何、その格好……と柚子は見るからにうわー、と呆れた顔をする。
「だって、ちょっと外見て帰る予定だったんだ。別に良いだろ」
「そんなだらしない格好でうろうろするんじゃないの!恥ずかしいでしょ!」
あ、ハリセン持ってくるの忘れたと柚子が呟くのを聞き遊矢はほっとした。新年早々年明け漫才の真似事なんてゴメンだ。
ふと目線を横にずらした遊矢はあることに気づく。

「なあ、柚子、あっち!初日の出!」
「話を聞い…あ、本当」
水平線の向こうから橙色の光が昇ってくる。薄い水色だった空は徐々に群青色へと変わっていく。
「綺麗ね……早起きして良かったかも」
「俺もそう思うよ、柚子」

「――柚子、実はさっきからずっと言いたいことがあるんだ」
「え……?」
いつになく真剣な表情の遊矢。何を言われるのだろうと柚子は不安とほんの少しの胸の高鳴りを秘め、耳をそばだてた。

「起きてからずっとトイレいってなくてさ……早く帰ろう」
「~っ!バカ!バカ遊矢!」

家に帰った遊矢は去年の分の「やり残し」をしっかりとトイレに流し、母が作ってくれた雑煮を食べていけと引き留めた幼馴染と談笑しながらつつくという理想この上ない年明け最初の食事を摂ることになる。
ハリセンの代わりに彼女からの熱い初平手をしっかりと受けとり、まだじんじんと痛む頬をさすりながらではあったが。

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