ジャンル:遊戯王ARC-V お題:情熱的な母 制限時間:1時間 読者:129 人 文字数:1603字 お気に入り:0人

お母さんに感謝を贈ろう

※洋子さん視点。スタンダード次元過去話。

遊矢の母、榊洋子は昔からエネルギッシュな女性だった。
「舞網クイーンズ」の総長として夜を駆け抜け、ふとした切っ掛けで謎めいた男(遊勝)に惚れ込んだ勢いのまま押して押して、彼とゴールインを果たす。
そしてその後愛らしい息子を産み、最愛の夫と協力しあい共に育てていた。
三年前、遊勝が行方不明になるまでは。
その後は母と息子の二人暮らしで、周りの人々の協力も得ながら生活している。

家事を終えた洋子が一息つこうとテレビを見ていると、母の日ということで様々なコマーシャルが放送されていた。

――いつも頑張っているお母さんに感謝を届けよう!

それを見てふと笑みを浮かべる。遊矢が小さい頃、こんな感じのコマーシャルを見て尋ねてきたものだ。『かんしゃをとどけるって、どうやればいいの?』と。
それを聞いた夫は『うーむ……肩たたきとかはどうだ、遊矢』と暖かな眼差しで息子に対して答えていた。

そして当日の母の日、遊矢はあふれんばかりの笑顔で「おかあさんのかたたたたきけん」をたくさん自分にプレゼントしてくれた。
その自信たっぷりの顔がもう、本当に心の底から愛らしく、そのままぎゅうと小さな体を胸に抱き締め「もー、くるしいよぉ」と息子に怒られたものだ。

その後「かたたたたきけん」を早速使い、遊矢に肩たたきを頼んだ。
まだ頼りない小さな手のひらをぎゅっと丸め、少し凝った肩をぽこぽこと一生懸命叩く。
「ありがとう、楽になったよ遊矢」と伝えるとにこーっと遊矢は笑ってくれた。

「あの肩たたき券、どこに閉まったっけ?」
そうだ、確かタンスの右の引き出しの……と記憶をたどり、ほどなくして目当てのものは見つかった。
たどたどしい文字の、良く見ると「た」が一つ多い、息子の初めてのプレゼントの「かたたたたきけん」。
洋子はこれを見た瞬間ある考えが浮かんだ。

デュエル塾から遊矢が帰ってくる。コールがにゃあんと鳴きながら帰ってきた遊矢の出迎えをする。
「母さん、コール、ただいま」
「お帰り遊矢。今日の夕食はミッチーの新作レシピを参考にしたメニューだよ」
「へー、どんなのか楽しみだな」

夕食を終え、部屋に帰ろうとする息子を呼び止める。
「なんだよ母さん?」
「遊矢、これ覚えてる?」
そういい今日見つけた「かたたたたきけん」をヒラヒラと見せる。

「え、まだあったのそれ」
「このあたしが大切な息子のプレゼントをどこかにやる薄情者に見えるかい?」
「……わざわざそんなの見つけてきて、どうするの」

「決まってるだろ?この券一枚使わせてもらうよ」
そう言い遊矢に一枚券を渡し、ほら早く、と自分の肩を軽く叩いて見せる。
「……しょうがないなぁ」
遊矢は早速母の肩たたきを始めた。

遊矢の握った手がリズミカルに、そして適度に力を入れとんとんと母の肩を叩いていく。
「母さん、肩こってるね」
「主婦も気苦労が多いのさ。……遊矢、力が強くなったね。小さい頃は叩かれているのか分かんなかったくらいだったのに」
「俺だってもう十四歳だよ。それなりに力もつくさ」
「そうか……遊矢ももう十四歳か。大きくなったね」

夫が行方不明になった後様々な非難、嘲笑、バッシングの矛先は彼女や一人息子に襲いかかった。
あのやられぱなしで毎日泣いていた遊矢が、こんなに成長して。
思わず目頭がじんと熱くなるのを必死で抑えた。

「遊矢、ありがとう。肩がものすごーく楽になった」
「別に良いよ礼なんて……また頼まれたらやるよ。母の日は関係なくね」
「へぇ、母の日に何かにプレゼントする予定でもあるの?」
「あっ!……き、聞かなかったことにしてよ、もう!」

そして母の日当日、最愛の息子からカーネーションの花束をプレゼントされる。
それは洋子の一番好きな、情熱の鮮やかな赤色のカーネーションだった。

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