ジャンル:遊戯王ARC-V お題:2つの風 制限時間:1時間 読者:18 人 文字数:1368字 お気に入り:0人

風と共に生きる

リンの独白。過去の捏造設定あり。冬はシンクロ次元の季節。


私の周りにはいつも風が吹き抜けている。

一つは汚れのない白を基調にした、シティの全てのデュエリストの頂点に立つ「王」をリスペクトしたようなDホイールを乗りこなす彼。
最初はDホイールを作りたいって拙い絵で画用紙いっぱいに描いた「夢」だったのに、本当に実現させちゃった。

Dホイールの乗り方だってそう。コモンズに教習所なんてないから全部独学で、わからない所は色々な先輩Dホイーラーに聞きながら手探りでドライブテクニックを学ぶ日々。最初は上手く乗りこなせずに派手にクラッシュさせてはあちこちに擦り傷作ってボロボロになっていたのに。
今じゃそんなことはなかったなんて顔で飄々と風をまとわせ、道ある所をどこまでも駆け抜けていく。彼が乗るDホイールのモデルにもなっているかもしれない、シティのイルミネーションのように煌めく翼を持つドラゴンを従えながら。

そんな彼の姿を見るのがここ最近の私の楽しみの一つ。別に異性として好きという訳じゃなくて、ちっちゃい頃から突っ走りがちで変な所で冷めている、そんなユーゴがなんとなくほっとけないだけ。そう、それだけ。

もう一つは雪を舞散らせながらいつもイタズラっぽく私に微笑む、生まれたときから隣にいてくれた風と雪の魔女達。
親も家もない私の数少ない持ち物はこの繊細な細工の銀に輝くブレスレット、そして「W・W」をテーマとした立派なデッキ。どうしてただの身寄りのない子供がこんな不釣り合いなものを持っていたか…なんて聞かれたけど、自分自身でもわからない。

そのことで施設の子達からは色々と言われた事もある。トップスの子供から盗んだだの、小さな女の子が好きな特殊な趣味の人におねだりして買ってもらっただの…好き勝手言われた記憶がある。
一番酷かったのは、妬まれて「W・W」を全部盗まれた事。少し目を離した瞬間、大切なデッキが丸ごと煙のように消えていたときのあの恐ろしさは、今思い出しただけでも体の芯から冷たくなる。

相手にとって不幸だったのは、私はやられたらそのまま黙っているほどか弱くはないということを知らなかったこと。大方の犯人は予想がついていたから問い詰めて「ちょっとだけ」痛めつけたらすぐに返してくれた。
それでも売られたりしていないか、傷がついていたり折れたりしていないか確認し終わるまでは生きた心地がしなかった。もしも彼女達が無事じゃなかったら、私は一生をかけても犯人を許さなかっただろう。

「W・W」の皆が無事だとわかった瞬間、安心からか私はボロボロと泣き出したのはよく覚えている。
そしてそんな私の様子を一部始終見ていたユーゴが「リンを泣かしたのは誰だ!お前か!?」と目についた子を片っ端からボコボコに殴っていって止めるのに必死だったことも。

いつか彼女達と共にシティの空を私自身のDホイールで走り抜けたい。冬を呼び込む風のように、一面を白く覆う雪の様に。鈴の音を高らかに鳴り響かせながら。
私を支え続け守り守られてきた、母のような、姉のような彼女達の為にも、そして私自身の為にも。

二陣の風と共に、私は今日も不平等でいびつだけど空だけは誰にでも等しく美しい、このシティで生きていく。
「W・W」の使い手、リンとして。

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