ジャンル:遊戯王ARC-V お題:黒尽くめの殺人 制限時間:1時間 読者:116 人 文字数:1432字 お気に入り:0人

一蓮托生



※エクシーズ次元過去話。ユート視点。

ハートランド……いや、俺達エクシーズ次元の住民は一方的な蹂躙を受けていた。
来る日も来る日も、雨も録に凌げない建物の残骸に身を寄せ、飢えを少しでも和らげるために乾ききった味気ない非常食を腹に納め、満足に飲めない水でひりつく喉の乾きを癒し、夜の到来に怯えた。
街灯も全く機能せず、目の前の状況が十分に把握することができない状況は「狩り」にうってつけだ。
家にある大切なデッキをどうしても取りに行きたいんだ、そういって闇の中飛び出していったレジスタンスのメンバーの一人はその日から姿を見かけていない。
夢を見ることなく眠りにつき、安心して朝を迎えられたのはいつが最後だったか忘れてしまった。

「限界だ」
隼がぼそりと、無表情のままそう吐き捨てるように呟く。
「いつまで俺達は一方的に狩られる立場でなければならない」
その整った横顔はたった数ヶ月で何十年も年老いてしまったかのような、生きることに対しての疲れが滲んでいた。

瑠璃が行方不明になった悪夢のような日から、隼の笑顔を見ていない。
深く沈んでいるかと思えば、突然爆発したように叫び回りの物を殴り付け、運が悪ければ近くにいた人間が犠牲になる。
人によっては威圧的に見えるが実は優しさを覗かせる、俺も瑠璃も好きだったあの金色の瞳が……今ではギラギラと「敵」に対する憎悪と妹を守れなかった自己嫌悪で妖しく輝き続けていた。
そんな隼を見るのが辛く、ほんの少し彼から距離を置き別の仲間と行動をともにしていた期間がある。

だから気づけなかった。その時隼がおぞましいことに手を染めていたなんて。


――ユート、隼がヤバいんだ……お願いだ、止めてくれ!

隼と別行動をとりしばらくしたある日、レジスタンスのメンバーの一人から泣きながら懇願された。隼の嵐のように加速していく感情についていけず俺のように別行動を始めるメンバーが多い中、彼は辛抱強く隼に従って行動していた数少ない人間だった。

「なにかあったのか!?まさかアカデミアに……」
「違う、違うんだよユート、実は……」
その言葉の続きを聞いていく内に、俺は顔から血の気が引いていくのをハッキリと感じていた。

久々に見る隼は、俺のよく知る彼ではなかった。
そこには故郷も自分の夢も、そして大切な存在も全て奪われ踏みにじられ、あらゆる負の感情が頭の天辺から足の先まで一杯になった「復讐者」が立っていた。

「……ユート」
俺に気づいた隼はニヤリと笑いかけてきた。こんなおぞましい笑い方をする彼は見たことがない。
「やったぞ……ついにやり返してやった!もうこれで誰も奴らに怯えることはない!ユート、お前もだ!!」
手には一枚のカードが握られている。
今にも叫び声が聞こえてきそうな、アカデミアの少年の怯え顔が一杯に写し出されたカードを。

アカデミアの下っ端の一人からあらゆる手段をもって詳細を聞き出し奪った「人間をカードにする技術」を、隼は実践した。
目の前の同じ年頃の少年達によって肉体的にも精神的にもボロボロになり、レジスタンスに……とりわけ隼に怯えきっていたアカデミアの少年に対して。

それが隼の最初の復讐、そして「殺人」だった。

「隼」
「どうしたんだ、ユート?」
「お前だけに罪を背負わせる訳にはいかない……俺も一緒だ」

俺は隼から件のデュエルディスクを奪い取り、相手を探す。
俺の初めての「殺人」相手を。

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