ジャンル:遊戯王ARC-V お題:大好きな蕎麦 制限時間:1時間 読者:82 人 文字数:1534字 お気に入り:0人

一年の終わりの過ごし方

遊矢は普段、蕎麦は食べない。自身の希望でパンケーキを朝食のメインにしたり、米飯に味噌汁、焼き魚にお浸しなどのお米の国に生まれたならばこれだろうと言わんばかりのコテコテの和食が並んだりと、日々和洋折衷の食卓である。
不思議なことに蕎麦がメインになることは全くといって良いほどない。ある一日を除いて。

「遊矢、蕎麦は温かいのと冷たいのどっちが良い?」
「うーん……天ぷらが乗った温かいの」

時は大晦日。テレビでは運動会の如く二組に別れ歌で競いあったり特別ゲストで盛り上がる毎年恒例の長寿番組や、お笑いタレントの大御所達が体を張って視聴者から笑いを取る番組など、一年を締めくくり競い合うように賑やかに映し出されている。
遊矢はそんな賑やかさをゆったりと自宅でまどろみながら、年越し蕎麦をすするのが何よりも楽しみと公言するやや渋い趣味を持つ少年であった。

「柚子ちゃんと二年参りにでも行かないのかい?」
「えー、外寒いし……あと同級生に見つかると色々言われるんだよ」
「なんだい、そこでがっついておかないと後で大変な事になるんだよ、遊矢」

そう一人息子をからかいながら、洋子は湯気が立ち上る天ぷら蕎麦を遊矢の前に置く。
揚げたての海老天は黄金色に輝き、透き通った茶色のつゆが程よく染み始め、いかにも食べ頃だ。
母親の問題発言に対して反論したい気持ちもあったが、今は何よりも食欲が上回った。腹の虫がまだかまだかと催促してくる。いただきます、の言葉もそこそこに遊矢は海老天にかぶりついた。
さくさくとした衣の歯触り、合わせだしがよく効いたつゆの風味、海老の弾けるような弾力と口の中でじわっと広がる旨味…温かいそばには何より海老天が合う、その事を改めて認識せざるをえない瞬間がそこにはあった。

「あー……やっぱり母さんの海老天はおいしいよ、これ食べないと一年が終わったって気がしない!」
「そんなにほめてもらえると、作った甲斐があるってもんだよ。遊矢、海老ばっかじゃなくて蕎麦も食べな」
母の言葉を聞くか聞かないかのうちに遊矢は蕎麦をすすり始める。ちまちまと食べるのではなく、ズルズルと音を立てて豪快に食べた方が蕎麦は美味しいものだ。そう教えてくれたのは自分のデュエルの目標であり、憧れそのものである、今はどこにいるかもわからない彼の父親であった。

メインの蕎麦は独特の風味がたっぷりと味わえる一流品だ。実はたまたま商店街の懸賞で当たった高級品であることは息子も知らないだろうな…と洋子はひっそりとほくそえんだ。
可愛い一人息子が自分の作った料理を満足げに食べてくれている。その事だけで十分すぎるほどに幸せだと彼女は感じていた。
ここに行方が知れない夫も食卓を囲んでくれていたら…というのはおくびにも出さず、ひっそりと思いながら。

「はー、おいしかった……」
つゆの一滴まで飲み干し、遊矢は頬をほんのり赤らめながら母に目を向ける。
付けっぱなしのテレビは歌番組を放送していた。そろそろ大トリの出番だ。

遊矢はしばらく何も言わず歌番組に見入っていたが、次第にまばたきが多くなってくる。食欲が満たされ体も温まり、今は本来ならもうベッドに入っている時間。
「遊矢、眠い?」
「ね、ねむく…ないよ。今度こそ年明けまで起きてるんだ」
「年明けの瞬間には起こしてあげるからちょっと寝な。どっちが勝ったかも教えるから。」
「……うー、わか、った…」
そう言い遊矢はコタツ布団にくるまり、すうすうと寝息をたて始めた。その寝顔は小さい頃から変わらない、何よりも愛しいものだった。

なお、その後洋子自身も寝入ってしまい、息子との約束を果たせず母子揃って夢の中で年明けをすることになる。

同じジャンルの似た条件の即興二次小説


ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:遊戯王ARC-V お題:あいつと息子 制限時間:1時間 読者:58 人 文字数:1309字 お気に入り:0人
※ユーリ視点。統合後。僕は物心ついたときからずっとひとりだった。僕の周りにいたのはプロフェッサー、そしてデュエルの相手と言う名目の「生け贄」。なんであいつらには 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:遊戯王ARC-V お題:春の誰か 制限時間:1時間 読者:127 人 文字数:1036字 お気に入り:0人
遊矢は皺一つない制服に腕を通す。まだピンと張りの強いそれは今日から中学生としての生活が始まる象徴だ。鏡で自分の姿を確認する。これからまだまだ背が高くなるのだから 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:遊戯王ARC-V お題:破天荒な女祭り! 制限時間:30分 読者:11 人 文字数:907字 お気に入り:0人
※柚子と文化祭。統合後。ここは舞網第二中学校。多くの学生が勉学にスポーツに励み、同年齢の少年少女達と交流を深める特別な場所。しかし今日はいつもと少し…いや、かな 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:遊戯王ARC-V お題:ラストは朝日 制限時間:15分 読者:8 人 文字数:438字 お気に入り:0人
※ユーゴとリン。過去話。「やっとここまで来たんだな、オレたち」「うん、そうね」コモンズに存在する孤児院。その近くにひっそりと存在するガレージの中、一つの夢が完成 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:遊戯王ARC-V お題:ナウいお天気雨 制限時間:15分 読者:9 人 文字数:413字 お気に入り:0人
※遊矢と沢渡。「なんだよいきなり降ってきて!」あんなに晴れていたのに、と遊矢は続けた。上からバケツ一杯の水を被せられたように髪から靴まで全部びしょ濡れだ。「この 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:遊戯王ARC-V お題:彼女の空想 制限時間:15分 読者:7 人 文字数:467字 お気に入り:0人
※セレナと柚子。セレナは空想する。もしも自分と柚子が姉妹だったら。(私と柚子はそっくりだから、お揃いの服を着たりするのだろうか?)学校の通り道で見た、手を繋いで 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:遊戯王ARC-V お題:幼い昼 制限時間:15分 読者:6 人 文字数:376字 お気に入り:0人
※五歳児遊矢と洋子さん。「遊矢、ほらお日様があんなに高い。日に焼けちゃうから帽子かぶりな」「めんどくさいよおかあさん」その母の声に反抗したくて当時5歳の遊矢はぷ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:遊戯王ARC-V お題:今日のゲストはぺろぺろ 制限時間:15分 読者:11 人 文字数:442字 お気に入り:0人
※遊矢と素良。数年後。「素良!久しぶりだな」「やぁ、遊矢に会いたくなっちゃって」ひらひらと左手を振りながら軽い調子で素良が答えた。もう一方の手には甘そうなキャン 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:遊戯王ARC-V お題:死にかけの円周率 制限時間:15分 読者:10 人 文字数:498字 お気に入り:0人
※遊矢とユーゴ。「3.1415…続きはなんだっけ」(どーでもいいだろ。大体3でいいじゃねぇか)「円周率をどこまで言えるか」を自分達の半分ほどの年齢の少年が挑戦し 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:遊戯王ARC-V お題:限りなく透明に近い霧雨 制限時間:15分 読者:6 人 文字数:512字 お気に入り:0人
※ユーリとデニスの話。「……酷い霧だね」「こんなにヒドイと無闇に歩き回らない方がいいね。一旦休憩にしよう、ユーリ」「僕に命令しないで欲しいんだけど」ボクとユーリ 〈続きを読む〉

伊菜メイ子の即興 二次小説


ユーザーアイコン
作者:伊菜メイ子 ジャンル:遊戯王ARC-V お題:大人の私 制限時間:1時間 読者:24 人 文字数:1502字 お気に入り:0人
※柚子と遊矢と思春期。大人になるってなんだろう。男子は外でサッカーをしている時、私達女子は黒いカーテンで閉めきられた視聴覚室にこっそり集合していた。そこでいつも 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:伊菜メイ子 ジャンル:遊戯王ARC-V お題:何かの深夜 制限時間:1時間 読者:21 人 文字数:1766字 お気に入り:0人
※リンと瑠璃と夜明け前の話。統合後「あー……もう、変な時間に起きちゃった」まだ夜も明けない時間、リンは前触れもなく目覚めた。手元の置いてある時計に手を伸ばし確認 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:伊菜メイ子 ジャンル:遊戯王ARC-V お題:反逆の夏 制限時間:1時間 読者:32 人 文字数:1690字 お気に入り:0人
※統合後の遊矢と夏とプールの話。「暑い……あつい、あ゛つ゛い゛」時は八月上旬、夏真っ盛りである。ここ最近の異常気象のせいもあり、常にコンクリートの道には陽炎が上 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:伊菜メイ子 ジャンル:遊戯王ARC-V お題:腐った広告 制限時間:1時間 読者:98 人 文字数:1594字 お気に入り:0人
※シンクロ次元。リン視点。暗い。ゴミがそこらに散らかっている掃き溜めの街、そしてゴミと同じくらいの存在価値しか与えられなかった私達に住むことを許された故郷、コモ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:伊菜メイ子 ジャンル:遊戯王ARC-V お題:君と姉妹 制限時間:1時間 読者:81 人 文字数:1609字 お気に入り:0人
※統合しなかったIF。同じ顔がこの世に二人、いつ見ても不思議な光景だ。もっとも自分も例外ではないが、と俺は瑠璃とシンクロ次元からこっちに遊びに来た少女…リンを見 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:伊菜メイ子 ジャンル:遊戯王ARC-V お題:疲れた大雪 制限時間:1時間 読者:84 人 文字数:1421字 お気に入り:0人
※ユーゴとリンと雪かきの話「ユーゴ、いつまでも寝てないで起きなさい!」「なんだよぉリン……まだこんな時間じゃねぇか」そう言い寝ぼけ眼でユーゴは時計を見る。日付が 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:伊菜メイ子 ジャンル:遊戯王ARC-V お題:苦し紛れの天井 制限時間:1時間 読者:117 人 文字数:1496字 お気に入り:0人
※エクシーズ次元の平和な話。ユト瑠璃。ユートは今、人生で最大のピンチに陥っていた。瑠璃と二人きりで会っていたことが親友であり、彼女の兄の隼にバレてしまったからだ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:伊菜メイ子 ジャンル:遊戯王ARC-V お題:大人のもこもこ 制限時間:1時間 読者:96 人 文字数:1250字 お気に入り:0人
彼女はふわふわもこもこ※最終回から数年後の誰かと誰かの話。彼女はふわふわもこもことしたものが大好きだ。冬と言えば、もこもことした暖かいものが機能面でもビジュアル 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:伊菜メイ子 ジャンル:遊戯王ARC-V お題:大好きな蕎麦 制限時間:1時間 読者:82 人 文字数:1534字 お気に入り:0人
遊矢は普段、蕎麦は食べない。自身の希望でパンケーキを朝食のメインにしたり、米飯に味噌汁、焼き魚にお浸しなどのお米の国に生まれたならばこれだろうと言わんばかりのコ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:伊菜メイ子 ジャンル:遊戯王ARC-V お題:黒尽くめの殺人 制限時間:1時間 読者:115 人 文字数:1432字 お気に入り:0人
※エクシーズ次元過去話。ユート視点。ハートランド……いや、俺達エクシーズ次元の住民は一方的な蹂躙を受けていた。来る日も来る日も、雨も録に凌げない建物の残骸に身を 〈続きを読む〉