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汚れ


「そうね。貴女には本当に感謝しているの」

整った顔。その表情をぴくりとも動かさず、ぽつりと呟いた。

「空っぽのがらんどうだった私に『私』を教えてくれたのは。間違いなく貴女だもの」

抑揚の無い声で続ける。彼女の瞳はずっと一点を見つめていた。

「それは認めるわ。えぇ、まったくもってその通りだからーーーけれど」

視線の先には一人の少女。エスに向き合うように椅子に座り、突っ伏すように上半身をテーブルに横たえる彼女は、その腕をぐいと伸ばしたまま、

「相変わらずなのね。本当に最悪だわ」

無心でエスの胸を指で突き続けていた。
「最悪」と評したエスの言葉を聞いても、なお胸を突く指を止めない。
エスはふぅ、と小さく息を吐き、厚手のカバーの本を開き、ページをめくり始めた。

かさり、かさり。

乾いたページをめくる、無機質な音だけが部屋を埋める。

どれだけの時間が経ったか、そんな静寂を破ったのは、

「…クズが」

というエスの呟きだった。

「あっ、やっと聞けた」

悪戯を続ける手を止め、少女がにへらと笑う。

「エスのその口癖、好きなんだよねぇ」
「誰のせいでこんな品の無い言葉が口癖になったと思っているのだか」
「何が原因だろうと、その言葉がエス自身から生まれた言葉なのは間違いないでしょ」
「……そうね、その通り。こんな汚い面も、間違いなく私の一側面」

ページの文字から視線を上げる。目を細めてエスは少女をじっと見つめ、

「ありがとう、最悪のクズの旅人さん。貴女のお陰でこんなに汚れた私も『私』として受け入れられたわ」
「それは何より」

お互いに微笑む。
「たまには私も何か読んでみようかな」と少女は立ち上がり、周囲を囲む本棚へと歩み寄る。
エスはまた本の世界に没入し、ページをめくる音が聞こえ始める。

さざ波のようにずっと、ずっと音は続く。
ページはめくられる。
鏡合わせの二人は自己を見つめ、見つめられ。
穏やかな世界はいつまでも、いつまでも続くようだった。

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