ジャンル:創作論破 お題:東京妄想 制限時間:30分 読者:50 人 文字数:1642字 お気に入り:0人

ある「都」について


「此処ってさ、仮に希望ヶ峰学園だったとしたら東京にあるってことなんだよね?」

 珈琲小僧の淹れた珈琲をすすりながら、寅娘は尋ねた。
夜時間になるかならないか頃のキッチン、寝巻らしき軽装にフードをひっかけた彼女は傍の丸椅子に腰かけていた。

「此処はフリースクールキボウガミネだと何度も言っているだろう。」
「うん、いや……そうなんだけどさぁ、ぼくあんまりトーキョーってどんなところか分からないんだよね。」
「ほう。」
「クラスメートやチームメイトは良く言ってたなぁ、東京に行ってみたいーって。」
「何でもそろっているのだろうからな、好奇心旺盛な子供なら興味は出るだろうな。」
「トロイは、あんまりきょーみないの?」
「別に、好き好んでそこに来た訳では無いからな。」

 東京、この国の都市に当たる場所。
経済の中心とでも言ってよさそうな場所は、空気が悪く目と頭が痛くなる場所だと最初に来て感じた。
食紅以上の何を使っているか分からない食べ物と格好を、なぜあんなに警戒無く齧っては軽々しく捨てられるのだろうか。

「最先端なものがあるみたいだけど。」
「嗚呼、確かにあったな……移り変わりが野菜より面倒くさく読めないから好かん。」
「流行の洋服とか……」
「あの風邪を引きそうな格好か? モデルとやらは何故あんなに痩せこけている奴ばかりなのだろうな。」
「遊園地とか、ゲームセンターとかも興味無い?」
「回転木馬なら、賭博は価値が無い。」
「ううー……」

 彼女が求めた回答では無かったのだろう、寅娘は唸った。

「そういう御前は、どう思っている?」
「ぼく?」
「東の京都、名前は魅力的だが御前がそこでしたい事等は無いのか?」

 濡れた皿を吹き終わり、布巾を干しながら今度は此方が尋ねることにした。

「ぼくは……うーん、浮かばないなぁ。」
「御前が好きな塁球の試合をしたいとか。」
「あ、試合ならとっくに東京の試合優勝したよ!そんなに強くなかった!」
「そうか。」

 あっさりと行ってしまうあたりについ苦笑してしまう。
子供らしいが意見に反して、仲間を纏める主将なだけある。

 することも無くなってしまったので、洗い場を背もたれに野良猫みたくやってきた小寅の相手をすることにした。

「私は昔から出稼ぎと称して多くの地域や都市、時には別の国に行った。」
「そうなの? 凄いね!」
「つまりは給料前払いで売り飛ばされた訳だが」
「売られた!?」
「まぁ幸い相手はいい人が多かったのでな、直ぐ事情を理解すればちゃんと帰れたし問題は無い。」
「そうなのかなぁ……?」

 この話をすると毎回怪訝な顔をされるが、とっくに慣れてしまった。

「その中で丁度東京に飛ばされた時があった。」
「その時はどんなことをしたの?」
「私はスタッフだ、小間使いから一定期間のまとめ役まで……汚い環境を除けばそれなりに儲かったから悪くは無かったな。」
「そっか……よ、よかったのかな?」
「その中で気づいたのだが、あそこは暗くなっても眠らない町みたいだな。」

 小銭と貧相な身支度だけでホテルに連れて来られたことを思い出す。
幸い男の格好をしていたので、見下されることはさほど無かった。

「只、分かったことと言えば……」
「分かったこと?」
「あの場所は、何でも高いみたいだ。」
「それ知ってる、物価とか土地の値段? だっけ?」
「それもそうだな。」

 寝静まらない夜、至る場所から様々な人が訪れていた。
飲んだくれたそれなりの年齢の男性。
ハイヒールを履きならした怖い位に着飾った女性。
年の差が有りすぎる男性と小娘……

「これはまだ御前には理解出来んだろうな。」
「えー何それ。」
「さぁもうすぐ夜時間になる、子供は早く寝なさい。」
「ううーんきになる、富樫なら分かるかなぁ?」
「さぁな。」

 寅娘をキッチンから追い出しため息を吐いた。
まだ知らなくても良いことも有るのだ。

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