二人で一人、一人で二人



以前、頭の中にどっかの誰かが勝手に話し掛けていた頃をシドーはふと思い出していた。
本格的にからっぽ島開拓に着手し始め毎日楽しそうに物作りをする姿は見ていて飽きない。だが、時折虚空に向かって誰かと話をしている素振りをする相手にシドーの赤い目が眇められる。
実際現在進行形の形で行われているやり取りは傍から見れば怪しいものなのに誰一人奇異の目を向けない辺り何かしらのからくりがあるように見える。
思い返せばいつからかスタンス自体がらりと変わることがあったことのは一度や二度ではない。さほど深く考えたり追求をしてこなかったとはいえ、改めて相手を観察するにあたり一人であるが一人ではないおかしな考えに辿り着いた。
一人は前々から知っている。物事をそつなくこなし周囲を引っ張っていくことに長けている。
もう一人は物作りと素材集めに余念がなく雰囲気も前者より抜けている。なにより見た目は男だが女に見えた。いや男であることには変わりない見た目自体が変わったわけでもない。ただ漠然と女だという認識が前に出てくる。

今まで気に留めず気にしていなかったことを思い返せば思い返すほどシドーの記憶の中に思い当たる節がどんどん出てきた。
物作りに必要な材料を集めいた頃。あともう一つ見つけ難い素材を探している最中、何かに耳を澄ませたあと急に進行方向を変え散々探しても見つからなかった素材を見つけたり。
住人の家を作る時も脈略無しに何か言い争っていたかと思いきや先程とは違う動きで家を作り出すこともあった。

訝しげに見つめるシドーの赤い視線は相も変わらずせっせと新しいものを楽しそうに作り続けている顔に向けられている。
もし、それが相手にとって良くないものだったらと薄暗い闇色が緋色の瞳に宿り始めた。背中に背負った武器の柄をぎゅっと握りしめながら距離を縮める。相手はまだシドーが近付いてくる気配に気付く様子もなく、地図を広げあたかも他の誰かと相談するような素振りで頷いては思い出したようにパンを口に銜えたまま設計図を書き始めた。
満腹になったのか手に持っていたハンマーを意気揚々と掲げ土地を整地し始めた相手の背中をシドーが注意深く観察する。
今のあいつはどっちだ。どっちなんだ。冷めていく思考と緊張感の中、目の前でせっせと見ていて飽きない物作りをする姿に背負っていた武器を抜いた。決して壊したくない、だが壊さねば悲しく辛い思いをするのはあいつだ、と半ば使命感染みた思考がシドーの頭の中を埋め尽くす。
幸か不幸か忙しなく動いていた相手が立ち止まり再び周囲を見渡した。この好機逃してはならない。
手に持った武器を傍らで控えさせ、今いる相手は壊すべき相手か否か見極めようとした刹那。実際には見ていない、されど見ていた記憶が色鮮やかに再生された。

強敵に立ち向かう際、戦う相手の傍らで懸命に応援するもう一人の相手の姿を。
慣れない運転を急に任され安全運転を心がけながら奈落の底へ落ちていく姿にため息を漏らす姿を。
心の底からシドーが戻ってくるのを願い叫んだ二人の姿を。



暫し放心していたのか顔の前で手をひらひら動かす相手にシドーは笑った。
これは自分と違って無害なものだと。何の脈略もなしに笑いだすシドーを小首を傾げ見る相手の存在がなにものだろうがシドーにとって至極些細なことになったのは言うまでもなく。変わらず傍にいるのであれば別段問題ではないと笑い飛ばしたのだった。

同じジャンルの似た条件の即興二次小説


見つかりませんでした。

チクチク目打ちの即興 二次小説


ユーザーアイコン
作者:チクチク目打ち ジャンル:からくりサーカス お題:淡い演技 制限時間:30分 読者:17 人 文字数:667字 お気に入り:0人
単身、でもないか。ズタボロの体で敵の本拠地に乗り込んで世界中に蔓延するゾナハ病の止め方を聞きに来る無謀さは褒めてやってもいい。実に馬鹿馬鹿しくて滑稽極まりない。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:チクチク目打ち ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 ストーン・オーシャン お題:殺された善 制限時間:30分 読者:36 人 文字数:716字 お気に入り:0人
歩き辛い事この上ない舗装されていない道は所々生い茂る木々が我が物顔で足を伸ばし歩く者を躓かせてくる。現状舗装する予定はおろか見通しすら立っていない悪路とのこれか 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:チクチク目打ち ジャンル:ドラゴンクエストビルダーズ2 破壊神シドーとからっぽの島 お題:つらい夫 制限時間:15分 読者:79 人 文字数:401字 お気に入り:0人
「これが終わったらシドーの部屋を作るって?」青い瞳がランランと輝き何度も頷き、慣れた動きで背中に背負っていた本を取りシドーの顔の前に書き途中と思われる設計図が掛 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:チクチク目打ち ジャンル:ドラゴンクエストビルダーズ2 破壊神シドーとからっぽの島 お題:鋭い感覚 制限時間:30分 読者:71 人 文字数:550字 お気に入り:0人
一切反らされず注がれる赤い瞳に近付いていた足が止まる。背筋とは言わず周囲に満ちる威圧感は熱を奪いシドー以外の声を音を消した。「教えてくれよなあ… 」シドーが一歩 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:チクチク目打ち ジャンル:ドラゴンクエストビルダーズ2 破壊神シドーとからっぽの島 お題:地獄の四肢切断 制限時間:30分 読者:88 人 文字数:465字 お気に入り:0人
間取り、豪華さ、ムードに至るまでリクエストに沿った作りにしようと四苦八苦悩み唸る様でさえ心底楽しそうに見える。積み上がった壁に寄り掛かるシドーの顔つきが険しくな 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:チクチク目打ち ジャンル:ドラゴンクエストビルダーズ2 破壊神シドーとからっぽの島 お題:日本理由 制限時間:30分 読者:70 人 文字数:552字 お気に入り:0人
一心不乱それこそ楽しそうに物作りする姿を見ているだけで胸の奥からあったかな何かが溢れてくる。これがきっと見ていて面白い楽しいという感情なんだろう。実際相変わらず 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:チクチク目打ち ジャンル:ドラゴンクエストビルダーズ2 破壊神シドーとからっぽの島 お題:いわゆる逃亡犯 制限時間:1時間 読者:87 人 文字数:1425字 お気に入り:0人
以前、頭の中にどっかの誰かが勝手に話し掛けていた頃をシドーはふと思い出していた。本格的にからっぽ島開拓に着手し始め毎日楽しそうに物作りをする姿は見ていて飽きない 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:チクチク目打ち ジャンル:ドラゴンクエストビルダーズ2 破壊神シドーとからっぽの島 お題:孤独な復讐 制限時間:30分 読者:102 人 文字数:631字 お気に入り:0人
心の奥底から沸き立ち枯れることの無い破壊衝動。何もかも跡形すら残さず壊したい欲望のまま身を委ねた。全てを破壊しつくせよと頭の中で声が響く。振るう腕が何かを破壊す 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:チクチク目打ち ジャンル:SSSS.GRIDMAN お題:猫の殺し 制限時間:15分 読者:87 人 文字数:519字 お気に入り:0人
どうして設定した通りにならない。どうして思い通りにならない。この世界は私が作ったものなのになんでも思い通りに作り替えられない。勝手に動いて邪魔してどうしてどうし 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:チクチク目打ち ジャンル:SSSS.GRIDMAN お題:隠された彼女 制限時間:30分 読者:96 人 文字数:609字 お気に入り:0人
とくに動物の類が苦手というわけではない。見た目も中身も猫に懐かれれば満更でもなかっただろう。ただ見た目が、見た目の方が裕太にとっては大問題だった。ソファに座った 〈続きを読む〉