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純白の帰り道

「うー、さむっ」
寒い寒い、と手をこすり合わせれば、それだけ着ているのに何を言っているんだ、という顔の国広と目があう。
「あんたはあったかそうだよね……」
簡単な遠征の帰り道、すぐ終わるものだからとつい普段の恰好で出てきてしまったが、行先が真冬の東北地方に指定されていたのにもっと気を留めるべきだったな、と思う。
「……貸せるものは何もないぞ」
「なんであの布脱いだの」
「脱がない方がよかったか?」
「いえ脱いでくれてありがとうございます」
そうは言っても寒いものは寒い。襟巻を鼻先まで持ち上げささやかに抵抗を試みる。
ざく、ざくと雪を踏みしめて歩く。以前似たような遠征に出た時、陸奥守に「おんしその靴でよう歩けるのう」(なおこの時奴はさすがに地下足袋を履いていた)と言われたが、新雪ならかえって踵がうまい具合に刺さるので歩きやすい。――氷の上は無理だけど。
と、半歩後ろからついてきていた足音が不意に消えた。
「ん、どしたの?」
いや、と言いながら国広は俺を頭のてっぺんからつま先まで視線を動かす。
「……良く映えるな、と」
「あー、白いから?これが鶴丸さんだったら消えるよね」
「まあな。……すまない、寒いんだったな。さっさと帰ろう」
先に歩き出した国広が、今度は俺の一歩前を歩く。ほつれを直したスラックスの裾がすっかり湿って色が変わってしまっている。あんただって冷たいだろうに。
「そーね、早く帰って熱い風呂に入りたいよ」
脇差あたりがきっと熱い湯を用意していてくれているだろう。

白も好きだ。赤がよく映えるから。
だから本当、国広が布を脱いでしまったのが残念なのは事実で。
だけど俺が雪に映えるのは、指摘されなければ気付かなかった。
少しだけ足取りも軽く、俺は本丸へのゲートへと急いだ。

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