ジャンル:文豪ストレイドックス 太中 お題:明日の町 必須要素:生理痛 制限時間:30分 読者:36 人 文字数:1211字 お気に入り:0人
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誕生日に一番最初に会う人は

橋の手摺から下を見下ろす。
遥か下では、先程迄の豪雨で水かさも流れる激しさも増した川が流れている。
微笑み、手摺に上る。そして、両腕を広げ、寒々とした夜風を細身の躰に受ける。初夏とはいえ、こんな天気の夜ではまだ寒さを感じる。砂色の外套がはためいた。両腕を広げた無防備な躰を前に傾け、そのまま下降し……

ガシッ

当然、重力に従ってその躰は荒れた水面に叩き付けられる筈だった。しかし、それは阻止された。

「相変わらずつまんねェ事してやがるな、太宰」

太宰、と呼ばれたその男は、盛大に溜め息をついて首を回し、たった今自分の外套の襟を掴むことで自殺を阻止した男……中也をじっとりと睨んだ。睨まれた方は手摺に片肘をつき頬杖をついて、軽々と太宰をぶらさげて本当につまらなそうにしている。

「本当に君って最悪。離してよ」
「い・や・だ。手前には未だ俺に貸しがあんだろうが。全部返してから死ね」
「そんなのあったっけ?」
「オイ、俺の車とワイン、忘れたわけじゃねェよなァ……?」
「知らないなあ。取り敢えず離してくれる。苦しいんだよね」

中也は不服そうな顔をしながらも、太宰を引き上げて手摺の向こう側に立たせた。太宰は中也の隣にぶらんと腕をもたれさせ、文句を云った。

「どうして君は何時も私の趣味の邪魔をするのかなあ……死ね死ね云ってるくせに」
「うっせえ、死ね」
「機嫌悪いねえ、生理?」
「本気で殺してやろうか……?」
「冗談、最後に見るのが君なんて最悪。矢っ張り美女の笑みを見て死ぬのが一番だよ」
「あっそう」

中也は頬杖をついたまま、静かに夜空を見上げる。太宰はその横顔をみつめる。それに気づいた中也が、「なんだよ」と声をあげる。太宰はそのしかめた中也の顔を暫くみつめ、そして、ふ、と笑った。

「あ”?」
「ふふ……あははははっ」
「オイてめ、何笑って……」
「あはは、本当に最悪だね、君」

誰もが眠った静かな町に太宰の笑い声が響く。中也はいぶかしげにそれを見、こいつ大丈夫か……? と割と本気で心配をしていた。
笑い終わると、太宰は手摺を乗り越え、「よっ」と中也の隣に降り立った。

「中也」
「あ?」

太宰は、心底楽しそうに笑って、しかめっ面をしている中也に云った。

「私の自殺を邪魔した詫びにお酒でも奢り給え。特別に君の家に足を運んであげよう」
「あ”? 誰が手前なんかに……」
「だって」

嗚呼、本当に可愛くない。
だけど、今日……否、明日くらいは

「お酒でも呑んでれば日付も変わるでしょ」

中也が目を見開く。

太宰はそれを楽しそうに眺めて、外套のポケットに手を入れ、歩き出した。

はっとしたように、中也がそれを追いかける。

「云っておくが、家には日本酒は一本しかないからな」
「いいよ、ワインでも」

二人の影が街灯に照らされて静かなアスファルトに映った。


明日は太宰の誕生日だ。

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