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地獄のように、血のように、恋のように



 苦い、と悲鳴のような声を上げた目の前の男。砂糖の瓶を手にとって、大さじを平気で超えた量をばさりと手元の茶色に溶かした。牛乳も多量に入れたおかげで元より大分薄くなっていた珈琲が、予想を超える甘味を受け入れてとろりと揺れる。

「小西……そこまでするなら、どうして珈琲など飲もうとしたんじゃ」

 最早珈琲と呼んで良いものなのか、また別の飲み物になってしまったような其れが、行長の喉をこくんと震わせる。
 漸く満足する甘さとなったのか、行長は少しだけ頬を弛めて、そしてこちらを一瞥してフンと鼻を鳴らした。

「お主の前だったから、かな」
「なんじゃそれは」

 格好付けようとして失敗した場合の出来になっているとはあえて告げず、自分も手元の濃い茶を飲んだ。なんとも言えない苦味は四百年前では味わえなかった「洋」の味わいがある。
 目の前から視線を感じて目線を上げると、行長は頬杖を付いてこちらをじっと見つめて、目が合った瞬間に目を細めた。何かを企んでいるかのようなその瞳に悪寒のようなものを感じたが、目を離すことはしなかった。

「“珈琲というものは”──この先は何だ?」

 行長は不意に問い掛けた。
 聞いたことのある文だった。そうだ、確か少し前に叔父から聞いたような気がする。コニタンがこんなこと言ってたのよ、と無駄にくねくねしながら自慢げに話してきたのであった。
 その続きは、恐らく。

「……“地獄のように黒く、血のように濃く、恋のように甘くなければならない”」
「左様。良う知っておったな」

 答えると行長は少し目を丸くして、間違いは無かったことを伝えた。此奴に馬鹿にされるなど言語道断、と強気でありながら、間違えなくてよかったと、弱々しく安堵している己もいた。

「この諺、良いじゃろ?」
「よく分からんがの」

 実直に生きてきたお陰で、婉曲した表現を理解するのが些か苦手であった。よく分からないけど、何となくわかるような気がする。諺として説得力に欠けるのも如何とは思うが、まあ、外つ国の感覚というのはそういうものなのであろう。
 目を細めた行長は更に続けた。

「我らの因縁も、似たようなものだからな」

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