ジャンル:うたわれるもの お題:わたしの好きな使命 制限時間:2時間 読者:1225 人 文字数:2416字 お気に入り:1人

賭け【未完】 ※未完

「ある。好き嫌いは確実にある」
 使命に――やらなければいけない事に好きも嫌いもないだろう。自分の考えとは全く違う意見をぶつけるハクオロに、ベナウィは溜め息を吐く。
「そう仰ってはまた御政務を放棄され」
「そ、それは違う。これは使命ではなく政務だ。尤もこれも好き嫌いがあるが――」
 聖上、と窘めるベナウィに、ハクオロはいつも通りの「解っている」を繰り返す。書簡の山を取っては、それに目を通す様子と同じように。
「別に嫌いだからといって、やらないと言っている訳ではない。実際、全部やっているだろう?」
 ハクオロの言葉に、偽りはない。現にトゥスクル國は急速な発展の一途をたどっており、ケナシコウルペ國時代よりも國力が上回るところまで来ている。故に、ハクオロの問いにベナウィは沈黙で答えた。
「というか。お前だって、好き嫌いの一つや二つあろうだろう」
「ですから。得手不得手、ということはあると思われますが。好き嫌いなど……」
「試してみるか?」
 自信に満ちた勢いのあるハクオロの一言に、ベナウィは窮する。ハクオロが何を言い出すのか、散々に考え――答えは出ることはなかった。
 黙って続きを待つベナウィに、せっかくだから賭けをしよう、とハクオロは笑って書簡を閉じた。
「お前は、任務に好きも嫌いもない、と言ったな」
「はい」
「もし今から言う任務にお前が好き嫌いを感じなかったら、私は三日だけ真面目に政務をしよう」
 三日だけ、という部分に若干の不満を持ちながらも、確実に政務をこなして頂けるのであれば、とベナウィは目を瞑った。
「だが、逆に好き嫌いを感じたなら。私に一日の休みをくれ。どうだ?」
「……私が嘘を申し上げる事は、お考えにならないのですか?」
 その必要はない、と自信満々に胸を張るハクオロに、ベナウィは苦く笑った。
「して。その任務とは」
「いつかは、やって貰わないと困ると思っていた事だ」
「…………」
「いいか、重要な任務だ。言っておくが、お前にしかできない。期限は一日、明日の昼過ぎに答えを聞こう」



 任務を与えられた日の翌日、もうすぐ陽が真上に到達する頃にて。皇城内にある広場の片隅にて、槍でも筆でもない物を持ちながら、ベナウィは困惑する。
「エ、エルルゥ様……」
「大丈夫です。アルルゥはハチミツ大好きですから」
 絶対来ますよ、と隣で念を押すエルルゥに、ベナウィは益々困惑する。
 アルルゥと仲良くなること。それが、ハクオロがベナウィに与えた任務である。皇女と臣下――別段、仲良くなる必要は無いとベナウィは思うが、いざという時に守れる状態にまではやり取りできるようにはしてほしい、というハクオロの言葉に閉口した。
 必要と思われる時にさえ、ベナウィとアルルゥの会話はまるで成立しない。ベナウィが声を掛けるや否やアルルゥは物陰に隠れ、ベナウィとの距離を取る。その様は、人見知りという彼女の性格だけでは言い表せない程に突出している。親族であるハクオロやエルルゥを介して辛うじてやり取りができるものの……質問しても、届け物を渡しても、アルルゥは何も言わない。最初こそアルルゥ様はそういう御方なのだとベナウィは思っていたが、ベナウィの部下であるクロウとのやり取りは比較的良好であるからして、ベナウィに問題がある事は明白なものとなった。
 今回の任務はその状態の解消である。とベナウィは理解する。が、他の任の合間を縫って接触を試みた初日の努力は普段の結果となって散った。さすがにこれではいけないと判断し、エルルゥに相談した結果が現在の状況である。
「ハクオロさんも、カミュちゃん――カミュ皇女も、コレで仲良くなったんですよ」
「さ、左様で御座いましたか……」
「『アルルゥとの友情は、共にハチの幼虫を喰らうことから始まる』ってハクオロさんも言っていましたし」
「は、はあ……」
 両手に持つ入れ物の中、ハチの巣の奥で蠢く幼虫たちをじっと見つめるベナウィの頬に、一筋の汗が流れる。その隣で微笑みながら、エルルゥは軽く頭を下げた。 
「それじゃあ、私はこれで。あ、知っていると思いますけど……ムックルはこれから、ウォプタルの調教師さんに身体を診てもらいに行くので、アルルゥをよろしくお願いしますね」
 それじゃあ、ムックル。とエルルゥは側で座っていたムティカパ――ムックルの身体を擦る。ムックルが立ち上がった事を確認し、そっと促しながら場を後にした。
 小さくなるエルルゥの背中に、ベナウィは頭を下げた。
 ムックルは育ての親であるアルルゥの側から離れる事はほとんど無い、故にアルルゥが一人きりになる事は非常に少ない。その事を理解しているエルルゥはムックルを連れ出す算段をベナウィのために立てた。皇女の手を煩わせてしまった事にベナウィは心苦しく思うものの、エルルゥの好意を受け取らない訳にもいかないため、この機会を決して無駄にはしなてはならないと気を引き締める。
「さて」
 エルルゥの優しく気配り上手な性格からして、アルルゥを此処へ呼んでいるのだろう、というベナウィの予想は即座に的中する。
 視線を感じて振り向いた先、大きな幹の後ろでアルルゥは頬を赤くして立っていた。恥ずかしいのか、あるいは――思考を巡らせるベナウィをよそに、アルルゥはおずおずと口を開いた。
「お姉ちゃんと、ムックルは?」
 眉を上げるアルルゥに、ベナウィは慎重に返答する。
「お二人は。用事があると」
「…………」
「ですから、私が代わりに」
「ウソ」
 エルルゥと共に考えた嘘が看過され、ベナウィは口を噤む。明らかな相手の反応にアルルゥは更に眉と両耳を上げた。
「ウソはだめ」
「……。確かに。仰る通りですね」
 ベナウィは情けなく笑った。その様子にきょとんとなったアルルゥに頭を下げ、持ち物と腰の剣を地に置きその場に正座する。
「」

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