ジャンル:Free! お題:1000の計画 制限時間:1時間 読者:1663 人 文字数:2599字 お気に入り:1人

1000個の幸せ詰め合わせ(真怜)

「真琴先輩。今度、暇が出来たら教えてくれませんか。」

部活帰り、めずらしく真琴と怜が2人きりで歩いていると、怜が呟いた。
いつもの癖の右手でメガネを押し上げる動作をしながら、唐突でなんの脈略もない問いかけ。
でもこれはきっと、怜が全力で勇気を振り絞ったデートのお誘いではないだろうか。
夕焼けで染まる空から反射した夕日とは違う赤みが、よく見ると怜の頬を染めている。

真琴は嬉しさと、そしてちょっぴりこそばゆい照れくささを噛み締めながら、改めて怜の方へと視線を向ける。

先日、色々と偶然が重なり合い、衝動のままに真琴が怜へと告白をし、紆余曲折を得たり得なかったりしながらも、
結果として真琴と怜は部活の先輩と後輩という関係から恋人同士へと発展した。
まだ手も繋いでないような至って健全な関係ではあるが、怜なりにきっと色々悩み考えた結果の誘いな筈だと真琴は感づいた。そうと気付けば、答えないわけにはいかない。こうして二人でいる時間が貴重な今だからこそ出来る話題。
渚や遥は一連の出来事を知っているので、ふたりの関係を知っているが、それでもやっぱり怜は気にしてしまったんだろう。例の性格からして、渚や遥がいる前で切り出せる話題ではなかった筈だ。もしかしたら、この言葉を口にする機会をずっとずっとうかがっていたのかもしれない。

想像上ではあるが、健気で可愛らしくいじらしい恋人の行動に思わずこの場で抱きしめたいのを真琴はぐっと我慢しながらにっこりと微笑み、優しい先輩の仮面を顔に引っ付けたまま怜の問いに堪える。

「今度なんて言わずにさ、今週の土曜日でも俺は大丈夫だよ?怜の予定はどうかな?」

「えっ、あ、本当ですか?じゃあ今週の土曜日、水族館行きましょう!!」

こんなに明確な、しかも割と日取りが近い答えが返ってくるのが予想外だったらしく、怜は不安げに真琴へ向けていた紫の目を動揺させるように見開き、そして次の瞬間には嬉しそうに顔を綻ばせて、嬉しさで感極まってしまったのか、言葉を多少詰まらせながらも必死に会話を続けようと言葉を紡いでいる。

「うん。いいよ、水族館。この時期だから少し空いてるかもね?」

「はい!僕が事前にチケット取りますから!あと僕が不束ながらお弁当つくりますのでお昼は心配しないで下さい!えっと、それから写真も取りましょうね!」

「怜が、お弁当作ってくれるの?うわあ、楽しみだなあー!ところで、怜?」

「はい!なんでしょう?」

楽しげにわくわくと土曜日の計画を話し合う怜と真琴。幸せに満ち溢れるありふれた、恋人同士のやり取り。だが怜が話を切り出した時から真琴はずっと気になって仕方ないことがあった。いくらいい雰囲気で幸せでも、気になって仕方がない、というよりむしろ、これは聞かなきゃいけない気がする。

「その手に持ってる、小さなノートって、何?さっきから熱心に見てるようだけど・・・。」

「よくぞ聞いてくださいました!これはですね!!先輩としたいこと1000の計画ノートです!」

どこか誇らしげに、声高々と怜が宣言した。その右手にはちょうど胸ポケットにすっぽりと入りそうな小型サイズの、ラベンダー色をした小さなノート。よく目を凝らせば表紙に几帳面かつ綺麗な字で【1000の計画】とタイトルまで書いてある。あまりの可愛さに真琴は目眩を覚えた。

「1000って、凄いなあ。そんなに色々考えてくれたの?」

「いや、あの・・・実はまだこれ、100も埋まってなくて。すいません。あ!もし良かったら真琴先輩の知恵を貸していただけませんか?」

ギクリと表情をこわばらせた怜がしょげたようにしゅんとしながら、あっさり白状する。いやむしろこの短期間で1000も埋まっていたらそれはそれで想像力豊かすぎて怖い。真琴は密かに安心しつつ、内容が気になって仕方がないノートについて突っ込んでいく。

「勿論!じゃあさ、内容かぶらないように、ちょっと見てもいい?」

「えっ・・・ちょ、ちょっと待ってください、色々消したいです。」

「そんな!怜が折角考えてくれたのに消しちゃうの?俺は怜が考えてくれたのに!それに俺としたいことならそのうちバレちゃうし結果として一緒じゃない?」

いざというところで尻込みしてノートを見せてくれない怜。だが真琴はめげなかった。優しくそれとなくずるい言葉で怜を追い詰めながら。やんわりと諭していく。ちょっとだけ演技を入れて悲しそうな表情と雰囲気を演出したのがきいたのか、数秒間悩んだ末に、怜は小さなノートを真琴へ差し出した。

「い、いいでしょう。でも恥ずかしいので、渚くんや遥先輩には内緒ですからね?絶対内緒ですからね?」

「ありがとう、そんなの当たり前だよ。怜と俺だけの秘密だよ。」

表紙と同じくきっちりとした綺麗な字で書かれたノートに内容はそれはそれは可愛らしいものだった。しかも達成した項目にはこれまたしっかりとレ点でチェックがしてあった。今までにクリアしたものは些細なことだけれども、思い出せば心がほっと暖かくなることばかりだった。そしてレ点のない項目でふと目につくのが、デートの誘う、水族館にいく、という項目。
これはきっと、帰宅したらレ点がつけられるんだろう。それからお弁当をつくる、というところにも。

微笑ましくて仕方がない項目の数々の一番下に、書いて消してを繰り返して紙が少しよれているところを真琴は発見した。よく観察して目を凝らすと、なんとか文字を解読することができた。真琴は恋人の可愛らしさに顔がにやけてしまわないように勤めながら、怜へとノートを返す。

「ありがとう、ここになかった内容で、2つ提案してい事があるんだ。」

「本当ですか?!ぜひ!聞かせてください!!」

照れたようにノートを受け取って気まずそうに視線を泳がせていた怜が、真琴の言葉にぱっと顔を明るくさせて真琴をじっと見つめつつ言い返す。どこまでも素直でまっすぐな恋人が可愛くて仕方がない。真琴はごくごく自然な動作で怜の手をそっと握る。

「ひとつは、手を繋いで歩くこと。もう一つはね、これ。」

手を握られたことに照れている怜のおでこにそっと、触れるだけのキスを落とした。
途端、顔が真っ赤になった怜をみて、唇へのキスはまだ先かなと思う真琴だった。

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