ジャンル:ONE PIECE お題:わたしの嫌いな祝福 制限時間:1時間 読者:1337 人 文字数:2017字 お気に入り:0人

その手の温もりの尊さ(スモドレ)



「…and of the Holy Spirit.Amen.」

血にまみれたサーベルを手にしたドレークの口から、無意識のうちに言葉がこぼれた。

昔の習慣というものは、中々身体に染み付いていて消えてはくれない。
神に祈りを捧げても神は誰も救ってはくれない事を、ドレークは身をもって知っている。
少なくとも、幼少の時に見てきた風景の中だと祈るだけでは飢えは潤されず、悪は正されず、人は死んでゆくだけだった。

だからいつしか、ドレークは正義に憧れた。人を正し、導き、時には悪を粛清してゆく。
そんな圧倒的なまでの強さとまっすぐな正しさに憧れて、海軍へと志願した。
気がつけば正義の名の下に、罪を犯した人々を裁く者へと成り果てた。

ドレークは胸に詰まっていた息を吐き出した。空気を深く吸い込むと、わずかに鉄錆臭い。それが酷く不快で、ドレーク眉をしかめた。

指先がひどく冷えている。正しいことをしているのに、罪悪感と絶望が押し寄せる。
自分が目指した正義はこんなにも冷たいものだったのだろうか、誰かが悪を裁かなければ平和は訪れないとわかっている。
そうだと分かっていても、ドレークは地位が上がり、周りが見えるようになり始めるに連れて心から納得して任務を遂行する事が出来な
くなっていった。

正義の名の下に、罪を犯した人々を屠り、血に塗れても尚、無意識に神へ祈る自分が、酷く浅ましい。
自己嫌悪に陥って、吐きそうになる。こみ上げてくるムカつきに奥歯を噛み締めていると、不意に温かい手がポンと背中を叩いた。

「おい。いつまでそこで、そうしているつもりだ?」

ぶっきらぼうで突き放すような言葉を投げかけくる同僚は、スモーカーだった。
入隊したての雑用の頃からの腐れ縁で、誰よりもずっと長く付き合ってきた友人で、気がつけば恋人だった。
スモーカーが話しかけてきたことでようやく呪縛が溶けたように、ドレークは強ばっていた顔の筋肉を緩めた。

「スモーカー、そっちの討伐は終わったのか?」

「こっちは外れだ。見張りしか居やがれねぇからふん縛っておいた。…そっちは大当たりだったみたいだな。」

至って事務的な会話。お互いの状況報告は少ない言葉で自然と行っていた。長年付き合い続けてきた結果としての副産物だった。
冷静さが帰ってきたドレークはサーベルに残っている血を振り払い、残った部分をポケットから取り出した布でさっとぬぐい、武器を鞘へと収めた。

「そうだな、指名手配中の海賊連中は恐らくもうこの世にいないだろう。」

「…殺ったのか?」

「まさか。目の前で自害されてしまった。追い詰めて投降させようとしたんだが、不甲斐ない。」

「後味悪い真似しやがって。胸糞悪ぃ。」

淡々と会話をこなしながら、ドレークとスモーカーは集合場所となっているポイントへ向かうべくゆっくりと歩き出した。しっかりと隊の上司に報告をした上で、もう一度この場へ戻り場所の後処理をしなくてはならない。敵側の怪我をして戦意を喪失した者は自分の部下たちが拘束し、見張っている。そして何より、追い詰めたことで自害してしまった者たちの骸もしっかり葬らなければ。

「悪魔の実、能力まだ安定しねぇのか?」

「どうだろう、以前よりはずっと安定はしてると思うんだけどなあ。」

ドレークの食べた悪魔の見は珍しい古代種の恐竜へと変化する。見た目が迫力あるので、どうしても相手を必要以上に怖がらせてしまう。能力を初めて使った時は、古代種の血に飲まれて理性を飛ばしかけたりなんかもした。今はそういう不測の事態は招かない程度に自制はできているが、使いどころがまだ決め兼ねている。下手に相手を怯えさせてしまうこの能力は、少し扱いづらい。

「お前の能力は見た目が凶悪すぎるんだよ。中身はこんなにボケボケな癖にな。」

「普段の見た目が凶悪なスモーカーに言われたくない。その顔のせいで今まで何人の子供を泣かせたんだ?」

スモーカーとの何気ない会話がドレークの冷え切って凍りついていた心と身体をじんわりとほぐしていく。軽い悪口の応酬は気心がしれているからこそ、心地がいい。

「うっせぇ。好きでこんな見た目じゃねえんだよ。」

「あ、なんだ。意外と気にしてたのか?顔、厳ついのとか。」

「……目の前で子供に泣かれるって結構な威力だって知ってるか?」

あんまりスモーカーが拗ねたようにボヤくので、ドレークは思わず吹き出した。以外に繊細なところがあるスモーカーの、こういう部分が愛おしくて仕方がない。スモーカーの隣にいるだけで、ほっこりと暖かくなる。まるで日だまりのようだった。

「おい、なに笑ってんだ。こっちは結構気にしてんだぞ?」

「いやすまない、でも。おかしくて。なあ、スモーカー。」

「…なんだよ改まって。気持ち悪ぃ。」

「ありがとう。」

「意味が分からねえ。」

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