ジャンル:青の祓魔師 お題:頭の中のぬめぬめ 必須要素:ペペロンチーノ 制限時間:1時間 読者:1861 人 文字数:2579字 お気に入り:0人

なにこれすっごいヌルヌルする


深く昏く、茂っている暗緑の木々。
どんよりと立ち込める濃い霧はきっと自然発生のものではない。
恐らくこの森に住まう悪魔たちの仕業だ。
これからこの森に住まう悪魔を退治しようというのだから、歓迎されるはずがないのは分かっていた。
どんな生き物から発せられているか分らない不気味な鳴き声も、森に立ち入ってからずっと聞こえていて気持ち悪い。

雪男は、そこはかとなく緊張する気持ちを解すように深く息を吸い込み、吐き出す。
冷たい空気が胸に広がって、心配事で曇りかけていた思考が幾分かすっきりしていくのを感じる。

一連の流れを雪男の隣で歩きながら見ていた燐が、雪男を肘で小突いてからうように声をかけた。

「雪男ー、何ため息ついてんだよ?もしかして、緊張してんのか?」

「何言ってるの兄さん。こんな時に冗談は止してよ、僕が緊張する訳ないだろう?こんな簡単な任務なんかで。」

メガネを押げながら、燐の軽口に言い返す。人知れず眉間にしわが寄っていくのは最早癖となりつつあるが、雪男は無自覚だった。
燐は返事をした雪男へしたり顔でにんまりと笑い返す。そうしてからかうのを続行するように向かいの思い出話をし始める。

「本当か?だってさ、雪男絵本の不気味な森に出てくる魔女の話怖がって泣いてだだろー。この森絵本にそっくりだもんなあ?」

「うるさいな、昔の話だろ?そもそも、絵本のつくり話が今も怖いわけないじゃないか。兄さんこそ、あの絵本怖がってたじゃないか。何かわからない生き物の、不気味な鳴き声が嫌だって。」

「ちっげーよ!あれは雪男が怖がってるからつられて怖かっただけだ、ってうぉあああ!なんか柔らかいもん踏んだ!!雪男!何だこれ!!?」

お互いに苦手だった絵本の話をしながら前方不注意で歩いていると、燐が素っ頓狂な悲鳴を上げてその場で飛びあがる。飛び上がった燐の足を追いかけるように深い緑色をした植物の茎が絡みつくので、燐はそのままバランスを崩して地面に倒れ込む。咄嗟に雪男は悪魔の仕業だと判断し、腰のホルスターから銃を引き抜いて間髪いれずに悪魔へと叩き込む。耳に不快な高音の悲鳴を上げて、燐の足に絡みついていた悪魔は茂みに引っ込んだ。

「コノやろ!逃がすか!!」

自由になった燐が即座に立ち上がり、同時に鞘から倶利伽羅を引き抜き、青い焔を纏いながら植物の悪魔を追いかける。飛び抜けざまのひと振りが、植物悪魔へと当たり、さっきよりも甲高い悲鳴を上げて半身を青い焔で燃やされていく。植物系の悪魔に青い焔はとても有効なようで、よく燃え広がる。このまま放っておけば消滅する、それを自ら悟った悪魔は最後の抵抗を示すように燐へと全身から枝や蔦など植物状の触手を伸ばして絡みつく、絞め殺してしまおうとする。

「くっ、この!離せ・・・ッ!」

「兄さん!!!」

絡みつく無数の蔦を振り払おうと倶利伽羅を振り回すが、数が多すぎて追いつかずに、燐の体には蔦が絡みついていく。燐の身体に触れた青い焔で燃やされていくが、少し太めの蔦はすぐには燃えず、焔に焼かれながらも燐を絞め殺そうと絡みつく。しつこい悪魔に燐も攻撃が追いつかない。
やっと燐に追いついた雪男が目にしたのは、植物状の悪魔に絡みつかれている燐の姿だった。思わず名前を叫びながら、雪男はもう一つの銃ホルスターから引き抜いて、右左両手の銃で本体の弱点である顔部分へと連続で叩き込む。濁った引き攣る不快な悲鳴と、べちゃりいう不気味な音を立てながら、悪魔の身体が限界を迎えて破裂した。濃い蛍光色のピンク色をした体液が周囲に飛び散った。

「雪男ー、ありがとうな。っていうかこれすっごいぬるぬる?ヌメヌメ?気持ち悪・・・!」

「兄さん!大丈夫?!怪我とかしてない!!?」

悪魔の拘束から解放された燐が、地面に腰おろした状態でへらりと笑った。頭から消滅した悪魔の体液を被っているので流石に魔障が心配で慌てて燐へと駆け寄る。近づいて見てわかったのだが、あの悪魔の体液は粘性がつよいらしく、頭から体液をかぶった燐の髪や手などがぬらぬらとテカっている。しかも色が蛍光ピンクなのが不気味さを引き立てている。

「んー、怪我はしてないぞ。ただすっげぇ気持ち悪い。これぬるぬるする、すっごいぬるぬる。風呂入りたい。」

「・・・ちょっとしみるかもしれないけど。聖水、頭から被る?」

水があれば洗い流せるかもしれないが、ここは深い森の中。水場を探すのも一苦労だろう。だったら持っている水はただ一つ。悪魔である燐には多少辛いだろうが、ネイガウス先生との戦闘で命に関わる威力が無いことは承知済みだ。トリプルC濃度ではない聖水ならあるいはいけるのではないかと、医工騎士的な方面から物騒なことを提案してみる。

「え、やだ!あれすっげえやだ!なんかすごいヒリヒリするんだぞ!?」

「じゃあ家までそのまま。いいよね?」

「それもやだ!!!ゆきおー!なんとかしてくれよー!」

「僕はそこまで万能じゃない、あとその呼び方止めて?四次元ポケット装備した青い猫型ロボットの気分になる。」

脱力して言い返したところで、雪男は急に息が苦しくなる。上手く空気が取り込めない。胸が締め付けられる。その場に膝をついた雪男のただ事ではない様子に気づいた燐が駆け寄るが、雪男に燐の叫ぶ声は聞こえない。どこか遠くで、燐が呼んでいるのに、周囲の音が遠のき、視界が黒くなって、意識までもが塗りつぶされていく。

「に、い・・さ・・・ん!!」

苦しさに最後、口にしたのは兄の名前。
ハッと目を開ければ、見慣れた天井と、首と胸に伸し掛る重たくて温かい、兄の身体と腕。つまりこれが、悪夢たる原因だろう。寝起きで機嫌が最悪な雪男は若干乱暴な仕草で燐の腕を退ける。

「ん?雪男ぉ?どうしたー。」

「兄さんの腕が重くてうなされた。責任とってよ、お昼ご飯、作って。」

「おー悪ぃ。もうお昼か、何作ろうかなあ。雪男、何がいい?」

「・・・パスタ。」

「んー、じゃあ材料なんもないから、ペペロンチーノ作るか。」

ベッドから立ち上がった燐が伸びをしながら台所へと向かってゆく。あの悪夢が夢でよかったと雪男はほっと息を吐いた。台所からはいい匂いが立ち込めてきた。

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