ジャンル:魔法先生ネギま! お題:戦争と終身刑 必須要素:スラム街 制限時間:30分 読者:592 人 文字数:1968字 お気に入り:1人

油断してたら時間余裕で足りなかった


「ふう」

崩れかけた瓦礫にもたれ、龍宮真名は空を見上げた。
吹き抜ける風が、体に空いた穴に染みる。

「……空は雲ひとつ無い晴天、か」

本来ならば、抜けるような青空なのだろう。
しかし今は、濁った煙が雲に代わってあの大空を覆っている。
その煙の原因の一つである自覚が、さすがの真名にもあった。

「絶好の散歩日和、だな」

かつて、まだ真名が学び者に居た頃。
役に立つからと背中を任せていた連中が存在した。
その中でも、自分と同じくらいの高い背丈と胸を持つ、自分とは真逆の穏やかな空気をまとった忍びの少女を、真名は気に入っていた。

忍びという影の世界に居ながら、決して闇に染まり切ることなく、穏やかな日の当たる場所に生きている少女。
彼女が少し眩しくて、ブラウン管の中にいるどんな少女より美しく羨ましい存在に見えていた。
だから彼女がたまに“裏”の顔を見せる時には何らかの形で関わり合ったし、彼女の傍に付き添っていた。
彼女は拒むどころか、日常でも構ってくれるようになって。
“あの人”がしてくれたように、細やかな日常をプレゼントしてくれた。

「……楓……」

長瀬楓。
いつからだろう、彼女の存在が、真名の中で大きくなりすぎたのは。
深入りすると辛くなる――そう思って、一線は引いたつもりだ。
何時どんな理由で敵に回ってもいいように。
仕事を忠実にこなした結果、彼女に嫌われてもいいように。

――魔族のハーフで長命である自分より先に、彼女が逝っても心が砕けてしまわぬように。

大切な人に先立たれる辛さはとっくに知っていたから。
あの苦しみを再び耐え抜く自信はないから。

「楓……」

だから、日常の中においては、楓と一線を引いていた。
楓はそんなのお構いなしだったけれど。
映画に誘ってくれたり、スイーツを一緒に食べようとしてくれたり――楓のおかげで、こんな自分でも『普通の女の子』を少しだけ味わえた。
楓のおかげで、あの数年は楽しかった。

『こんな天気のいい日は、散歩に行くべきでござるよ』

きっと楓も、日の当たる日常の心地よさを分かっていたのだろう。
だから鳴滝風香や鳴滝史伽と共に、暇さえあれば散歩をしていたのだろう。
“仕事”のための事前調査とは違う、本当に純粋にだらだらと会話と景色を楽しむだけの『散歩』を。

『生憎仕事だ。それに余暇には銃の手入れがある』

それが分かっていたから、ずっと楓の誘いを断り続けた。
散歩部という聖域だけは、自分が汚してはいけないような気がして。
忍びという闇の世界の宿命を背負わされた少女がようやく見つけた日の当たる場所を、万が一にも自分が壊してしまわぬように。

『むう、今日の散歩コースには、ふれあいコーナーのあるペットショップもあるでござるよ?』
『ぐっ……いやしかし、私はプロだ。仕事に穴は開けられんっ……』
『何もそこまで悔しがらなくても……うわぁ唇噛み切れて血液どばどばマーライオンになってるでござる……』

そして、楓もそんな気持ちを分かっていたからだろう。
必ず誘ってくれていた。
いつも気にかけてくれていた。

……自惚れかもしれない。思い上がりかもしれない。
もしかしたら、記憶を都合のいいように改変してしまっただけなのかもしれない。

それでも。
自分の記憶が確かならば、あの時楓とは想い合えていたのだと思う。
その感情が、なんと呼ばれるものなのかまではわからないし、きっと一生分かろうとはしないだろうけど。

『楽しいでござるよー、色んな建物とか、自然とか、そこに生きる人や生物を観察するのは』

その楓も、もう居ない。
宇宙に生身で飛び出したという狂った話をハガキで知った以来、連絡も取れていない。

当然だ。
あれからもう、随分時が経っている。
普通の人間と、魔族のハーフの自分とでは、時の流れが違うのだ。

『そこにある営みに触れると、心が暖かくなるでござるよ』

あの時以上に唇を噛み締め、穴の空いた体に力を込める。
このスラム街にあった営みを、守りぬく事ができなかった。
何か正しいことだとしても、変革には負の側面がともなう。
それを処理して生きていこうと決めたのに、それすらままなっていない。

「まだ……そっちには……逝けないな」

苦笑を浮かべた口端から血液が漏れる。
それでも真名は駆け出した。
その手に相棒の銃を持って。

戦争の最前線で、たくさんの悲劇を生んできた。
そんな自分が、こんな所で安らかに死のうなんておこがましい。

世界が変わるその日まで、戦いに戦い抜かなくてはならない。
死ぬとしたら、平和になった世界でだ。
人を殺しすぎた身として、終身刑でも受けよう。
楓を想って、楓の分まで散歩をするのは、それからだ。

同じジャンルの似た条件の即興二次小説


ユーザーアイコン
作者:エド ジャンル:魔法先生ネギま! お題:戦争と終身刑 必須要素:スラム街 制限時間:30分 読者:456 人 文字数:1176字 お気に入り:0人
「なぁ」「何?」「こうやって二人きりになって話す内容か? って感じやねんけども」「うん」「なんちゅーか、あれやな。強くなりたいって気持ちになるのって、終身刑と一 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:まるごと毛蟹サンド ジャンル:魔法先生ネギま! お題:大人のネット 必須要素:マイナスドライバー 制限時間:30分 読者:524 人 文字数:1128字 お気に入り:0人
「マスター、その遊びは些か悪趣味かと」「うるさい良い所なんだ、いいから見てろ、あ、そこの飴玉をかせ」「はい」茶々丸のたしなめる声に全く耳を貸す気はないようでエヴ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:まるごと毛蟹サンド ジャンル:魔法先生ネギま! お題:禁断の教室 必須要素:ち○ち○ 制限時間:30分 読者:498 人 文字数:994字 お気に入り:0人
『禁断の教室…?』それはあるお盆の事、帰郷の予定が無かった刹那、楓、真名は昼は修行をし、夜は三人でトランプやウノなどをして遊んでいたがしかしそれも2日もするとす 〈続きを読む〉

すかい「文章」ギオンの即興 二次小説


ユーザーアイコン
作者:すかい「文章」ギオン ジャンル:咲-Saki- お題:めっちゃ木 必須要素:甘栗 制限時間:30分 読者:66 人 文字数:1706字 お気に入り:0人
このー木なんの木_人人人人人_> 宮永咲 < ̄Y^Y^Y^Y^Y^ ̄「大変だーーーー!咲が木になっちまった!!!!」「えっ、須賀くんも咲さん狙いなんですか!?」 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:すかい「文章」ギオン ジャンル:咲-Saki- お題:大人の魚 必須要素: 制限時間:30分 読者:45 人 文字数:1998字 お気に入り:0人
「大変だーーーー!! 全国制覇の祝勝会で大量の寿司を取ったら咲が泡拭いて気絶したーーーーーーっ!!」須賀京太郎の絶叫が木魂する。ここは清澄高校麻雀部が部室。つい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:すかい「文章」ギオン ジャンル:咲-Saki- お題:裏切りの道のり 必須要素:スラム街 制限時間:15分 読者:87 人 文字数:1178字 お気に入り:0人
『ネリー、あたしね』そう切り出す彼女の顔は、いつも太陽のように輝いていた。ドブ川の底に溜まった泥のようなこの街で、あんな笑顔が出来るだなんて。素直に感心するし、 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:すかい「文章」ギオン ジャンル:ガールズ&パンツァー お題:彼のところてん 必須要素:《算数のたかし》 制限時間:15分 読者:193 人 文字数:1154字 お気に入り:0人
「大変よアリサ、貴女の愛するタカシくんがゲイビデオに出演していたわ!!」「!?」乱暴にドアが開け放たれる。驚いて振り返ると、そこにはサンダース大学付属高校戦車道 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:すかい「文章」ギオン ジャンル: お題:興奮した処刑人 必須要素:じゃがいも 制限時間:30分 読者:255 人 文字数:2382字 お気に入り:0人
「ほう……」深夜のコンビニエンスストアで、戸叶は一人雑誌を眺めていた。お目当ては、雑誌のグラビアページだ。ストリートファイトの賞金があるため雑誌を買う余裕くらい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:すかい「文章」ギオン ジャンル:咲-Saki- お題:馬鹿な借金 必須要素:予想外の展開 制限時間:30分 読者:255 人 文字数:2304字 お気に入り:0人
「なるほど、美味いな」ペペロンチーノを口に運び、辻垣内智葉が素直に賞賛の言葉を述べる。世辞でも何でもないらしく、皿に乗せられたスパゲッティは見る見る智葉の口へと 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:すかい「文章」ギオン ジャンル:咲-Saki- お題:商業的な消費者金融 必須要素:ペペロンチーノ 制限時間:30分 読者:284 人 文字数:1825字 お気に入り:0人
「roof-topか……なるほど。いい店だな」染谷まこの頬を、冷たい汗が伝った。「どうする」などという思考は、すでに放棄したはずなのに、それでも何か活路はないか 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:すかい「文章」ギオン ジャンル:バトル・ロワイアル お題:凛としたフォロワー 必須要素:山田が犯人 制限時間:30分 読者:362 人 文字数:2256字 お気に入り:0人
そういえば、集団下校というものが、ランドセルを背負ってる頃にはまだあったような気がする。相馬光子(女子11番)だって、まだ9つの誕生日を迎えるまでは、無邪気に集 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:すかい「文章」ギオン ジャンル:咲-Saki- お題:俺は犯人 必須要素:《英語のクミ》 制限時間:30分 読者:304 人 文字数:1575字 お気に入り:0人
「わあ」思わず言葉が漏れた。すっかり手狭になってきた勉強机。その大掃除をしていたら、プリントをまとめたファイルの中に、英語の教科書が紛れこんでいた。「懐かしいな 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:すかい「文章」ギオン ジャンル: お題:暴かれた会話 必須要素:会話劇 制限時間:4時間 読者:331 人 文字数:4750字 お気に入り:0人
「こんな格言を知ってる?」カップを口元に運びながら、金髪の少女――ダージリンが口を開く。「10のダンベルが全て揃った時。10人の始祖及び超人閻魔は――――」くい 〈続きを読む〉