鏡の向こう側 イザシズ? 未完 ※未完

 それを報復と名付けるにはあまりにも鏡写し過ぎた。ソレを否定すれば自分をどう表現すれば分からなくなるので折原臨也はそれをこう呼ぶしかなかった。
 ”平和島静雄は折原臨也を愛した”と
 馬鹿馬鹿しかった認めたくなかった。それでも調べれば調べる程平和島静雄は折原臨也の情報をかき集め、時には折原臨也の真似をして人心を弄び脅し煽て交渉して集め回ったのだ。まるで折原臨也のやり口だ。 
 何がしたかったかは分からないが、アイツはその途中で自壊した。いや、それを俺がやったと言った。
 化け物め!何がしたかったんだ。
 苛々としながら平和島静雄の痕跡を追う。それは折原臨也の痕跡を追う事になる。自分の尻尾をおいかける犬の様だと思いながら静雄との面会が出来る日まで可能な限り奔走した。
 その間に、純久からメールがが入った。平和島静雄が口先三寸で同じく純久の患者だった人間を三人殺し合いや自殺に追い込んだと。
 その時の映像も添付されていた。酷い物だった。俺はこんな風なのかと少し笑ってしまった。
 俺も聞いたことのある様な似た様な口上だ。自殺希望者に投げかけるような、苛立ち交じり呆れ交じりの揶揄の様な声。それは確かに平和島静雄の低い声で話されるのに、イントネーションも間もそっくりだ。思わず純久に電話をかけてしまう。
 「シズちゃんの中に、俺と言う人格が居るって言うの?悪い冗談だね」
 「愛し憎む相手を自分の中に宿すのは不自然な心理状態じゃないよ、まともな心理状態でもないけどね。映画『サイコ』の母親、生霊現象、そもそも親を嫌悪して育った子供ほど親に似てはいないかな?まぁ例外はあるけどね。
 深淵を覗きこむ物は深淵にも覗きこまれる。憎むあまり、似てしまう…そうなっていく。おかしなことではないのさ、臨也。僕は会って来たよ。気味が悪い位に君にそっくりでさ、笑ってしまったよ。アレは、静雄君の皮をかぶった折原臨也だ」
 「…ぞっとする。反吐が出るね」
 「それから、折原臨也は君に会いたいらしい」
 試すように見てくる新羅に、臨也はイライラしながら爪を噛んだ。
 「理由は?」
 「言わなくても見に来るのに?理由は必要なの?ってさ」
 「癪に触るね」
 「まんま君だからねぇ。君に逢いたがってるよ……約束の日、ちゃんと行かせるから会ってやりなよ」
 臨也は肩をすくめた。
 「いいですよ。俺も会って言ってやりたい事がある」
 「……あ、あと、君のくれた資料は役にたったよ。気持ち悪いね、君。どれだけ平和島静雄の事調べてるの?でもね、君化け物に成る前の平和島静雄には興味ないんだね」
 「……そりゃ、その頃の事まで調べる労力は裂く必要ありませんし。俺の脅威ではないですから」
 「そうだね。私は調べたから答えを教えてあげよう……誰も覚えてなかったよ。家族以外は新羅君も覚えていなかった。彼はどんな子供だったんだろうね」
 そう言って、一方的に切れた。誰も覚えていない子供、か。気になって、新羅に電話を掛ける。
  新羅は、怪物になる前のシズちゃんを覚えていないと言った。
 「まぁ、小学校の時ならそうなんじゃない?昔の事だ。入退院を繰り返してたとか、転入生だとか」
 「いや、居たよ?クラスメートだった。転校生でもない。そういう事は覚えてるんだ。でも、彼が誰と仲が良くてどんな遊びをして、何が好きだったかなんて事をさ、覚えてないんだ。だからまぁ、この間渋々同窓会に出てね?聞いてみたんだ。ねぇ、あんな事になる前の静雄を覚えているかいって。誰も覚えてなかったんだよ。それまで仲が良かったのにとかさ、あんな事する奴じゃなかったとか、昔っから怒ってばっかりだったとかさ。何にもないんだ。怒りっぽくなる前の静雄って、一体どんな子だったかを、誰も知らない」
 新羅は笑って、君に似てるねと言った。
 「俺に?少なくとも、あんな麒麟児ではなかったよ」
 「そう?でも、君は目立つ子じゃなかったみたいじゃないか。それは恐ろしい話だけど、業と身を隠していた訳でもないんだろ?」
 「そうだね。あくまで、観察がしたかったからね。当事者になって引っ掻き回す様になるのは、もっと先だったね。特別仲の良かった相手もいないし、そうだね、好物の話なんかもしなかった気はする。それでも、似てなんかいないさ。俺は、それを選択したんだし、アイツはそもそも弾き出されていたって言うだけの話だろ?」
 臨也はそう嘯いて、まだ熱い茶を少し啜った。
 「そうだね。でも、結果としてさ。君達の事を誰も覚えてない」
 「新羅の事は、誰か覚えていたのかい?いや、君みたいな奴が居た事なんか忘れられないか」
 「そうだね。少なくとも、君達よりはね。運動がめっきりできないとか、頭は良かったとかまぁ……覚えられている物だね。びっくりしたよ。こんなに友達の居なかった僕でもさ」
 君達は一体何なんだい?と、笑う。俺が聞きたいねと返しながら、果たして自分が何者かと言う問いに平和島静雄は答えられるのだろうかと首を傾げた。
 「ありがとう新羅。三枚付けるよ」
 電話を切って呟いてみる。
 『おまえは誰だ』
 ゲシュタルトが崩壊した中でも俺達は平然と立ってのけているという事だろうか。いや、あいつはとうに崩壊したんだっけ?
 「そうか、もう会えないんだね。シズちゃん」
 いつか、そんな日がくると思っていた。でも、こんな風にだとは思わなかったから、ぽっかりと胸に穴が開いた様に死者に会いたいと思ってしまう。そしたら、殺し直してやれるのに


 約束の日の前、臨也は調べ物を辞めた。今までのデータは波江さんに即時送って纏めてくれていたが読み返す気にもならなかった。
 温かい物をたくさん食べて、風呂に入って、良く眠る事にした。多分、明日が一番疲れるだろうから。
 「死体と会いたくないなぁ」
 呟いてみると、虚しい。それでも、逃げる気にはならず愛用のナイフを握りしめた。
 

 「やぁ、こんにちは折原臨也君。羅漢です」
 一見好青年の様な笑い声、けれど顔は間違いなく平和島静雄であって、彼が俺に笑うなんて事が起こりうるのかと思いながら苦々しく笑い返す。まさか、新羅の家でコイツがドアを開けるとは思わなかった。だから開けたんだろう。そんなことまで分かってしまう。


 

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