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木漏れ日の中で

【sideM やまはざやま】

 教育バラエティの一環で、俺たちS.E.Mはちょっと遠出のロケに出ていた。
 どちらかというとフィールドワークの要素が多く、三人の中では俺がカメラに向かって喋っている時間が長い。
 化学が専門分野だが、理科で教員免許を持っていることを世間に知られている手前、物化生地であからさまな好き嫌いを明言するのは憚られる。
 他の専門の先生に怒られるからね。

「こうやって森に入るのはいつ以来だろうか」
「俺、こういうところで遊んだことないよ」

 硲さんがポツリとつぶやいた。
 類も硲さんも、どう考えてもビジュアル重視で番組に呼ばれたんだろう。
 土の匂いが似合わない二人は、珍しい植物(とはいっても、俺の知識の範囲にある)を見つけては、ああでもないこうでもないと会話をしていた。
 おそらく本放送では、二人がメインになって、テロップで解説が流れることだろう。
 俺の役回りは、二人の引き立て兼保護者で十分だ。

「だいぶ歩きましたし、そろそろ休憩しましょうか」

 ディレクターが合図をすると、スタッフが一斉に散らばった。
 俺たちの荷物はせいぜいピンマイクぐらいだが、スタッフたちは重い機材を持って動き回っていてさぞ重労働だろう。

「お疲れ様です、ありがとうございます」

 そう思うと無意識に、一人一人に声をかけて回っていた。

「山下君」

 最後に一番若いスタッフに声をかけたところで、見計らったように硲さんに呼ばれた。

「なんですか?」
「あれはなんだろう?」

 硲さんが指さした先には、深い緑の森の中で、太陽の欠片がきらめいていた。

「木漏れ日ですか?」
「……綺麗だな、まるで宇宙のようだ」

 そういう硲さんの横顔が、木漏れ日よりもキラキラして見えて、思わず脈が速くなる。
 胸を軽く三回叩いて、咳払い。
 気を取り直して、硲さんに向き直った。

「本当の宇宙は、何もないです。もっともっと暗い場所ですよ」
「そうか……でも」

 そっと、硲さんの手が俺の顎鬚を撫でる。
 さらに胸がドキドキとして、顔も熱くなってきた気がする。

「どんなに暗い場所でも、山下君はすぐに見つけられそうだ。君は、キラキラと輝いているから」
「……は?」

 真っ赤な顔でどういう意味ですか、と問うと、彼はフッと笑って踵を返した。
 ああ、本当に。
 どうしてこんな人に惚れちゃったんだろう。

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