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虹のあとは(まいしきまい)



「虹が綺麗っすねー」

事務所から見える広い青空に、鮮やかな虹がかかっている。都会にある事務所から見える虹の存在は珍しく、四季は外を見て思わず声を上げた。視線を落とし、窓の外の往来を見れば、ビルが立ち並んでいるから見えないのだろうか。誰一人として気づいていないようだ。みんな、先ほどの通り雨が止んだ、と、ほっとしたように傘を折りたたんでいる。

「もったいないっすね、あんなに綺麗な虹なのに」

四季が思わず漏らすと、事務所の奥から舞田が顔を見せた。

「Wonderful! 綺麗なRainbowだね!」

いつもの英語混じりの話し方で、窓に近寄る彼は、20代には見えない。自分と同じくらいだろうかと思っていた時期もあるくらいだ。
あまりのテンションの高さに、意識せずにぼうっと見つめていると、綺麗な茶色の彼の目がこちらを補足する。
四季は思わず身震いをした。

「四季くんも、あの虹、見てたの」
「あ、は、はい!綺麗だなと、思ってあんまり見たこと、無いので」
「そうなんだ〜。俺の実家ではよく見えたんだよ!海が近くて」

そして、自分の人差し指と親指で枠を作ると虹を捉えた。片目をつぶってそれを覗き込む。

「こうしてみると、まるでPicture、切り取った絵みたいに見えてBeautifulなんだよ」

そういうと、舞田は、四季を自分の方へと呼んだ。
四季は舞田に近づくと、舞田の指で形作られた枠から、切り取られた世界を覗き込む。
無機質な街並みが、いきなり現れた太陽の光で光と影の境を濃くしている。陽の光は、溜まった雨水たちを反射して、街をいつもより一層輝かせた。その中央に、先ほどの虹が大きく輪郭を現す。そう本当に、一枚の絵画のようだった。

「すご…きれいっすね」
「でしょ?こうするとね、なんでも綺麗に見えるんだよ例えばほら」

そういって、舞田は四季の方へと手で作られた枠を向けた。

「四季くんも絵画みたいに見える、なんて」
「は」
「ふふふ…☆」

ぽかんと口を開ける四季に、舞田は続けた。

「何かつまづいた時は、気晴らしに風景を切り取るんだ。四季くんうまくいってなさそうだったから、ほら」

机に置いてあったノートを指差される。そこには、書きかけの歌詞があった。

「あ、ちょっと、そうなんです今。なかなか書けなくてふと見たら虹があって」
「ふふ、外に目を向けるの大事だよね!」

それじゃ、俺はこれで!Good bye!
颯爽と戻っていく舞田を見て、四季は呆然とした。
あんなに綺麗な虹、みたことあっただろうか。道行く人は気にもとめてなかったけれど。あんなに綺麗な。
四季は下を向くとふ、と含み笑いをした。置いてあった創作ノートの文字列を消しゴムで全て消す。それから、一言。

「ありがとうございます」

言い終わると、自分の手で、先ほど習ったように枠を作り、もうそこにはいない舞田の姿を指の額縁におさめた。

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