ジャンル:ガールズ&パンツァー お題:かっこ悪い汗 制限時間:30分 読者:268 人 文字数:1475字 お気に入り:0人

薔薇

 お嬢様、と言えば聞こえはよかった。
戦車道を歩み始め気づけば高等部最高学年になっていた。常に優雅で慌てずいかなる状況でも汗一つ書かず対処する。それが私の戦車道であるとほんのすこし前まではそう思っていた。それが変わったのは彼女と出会ってからかしら、と少し物思いに耽る。
 校風もあってか、この聖グロリアーナの戦車道は優雅さ気品さ、そういったものがいつの間にか中心にあったように思う。私も気づかないうちに。練習で汗をかくのは優雅ではない、とまでは誰も口にはしなかったがそこまで泥に塗れて動くのはいかがなものか、と自然と皆が皆思っていたのかもしれない。練習ですら優雅に汗一つかかず動く。そんな風であった。そういった空気が確かにあった。それが変わったのは私が彼女を見つけてからだ。
 今でこそ、彼女は薔薇を冠した優雅な名前を持っているが出会った当初は車と戦車の整備の汚れに塗れた聖グロリアーナ戦車道の対極に位置するような人だった。それが悪いというわけではない、ただ異質であった。その異質に私が惹かれたのはひとえにその整備への熱意、そして速さの極みを渇望するその底知れぬ何かであった。聞けば元々は自動車整備志望で入ったという。車が好きで車の速度に狂ってしまったいわゆるスピード狂とも聞いた。風のうわさにそのことを聞いた私はならば戦車に乗せてみなさい、と言った。鉄と油と炭素の混じった不思議な匂いの狭い車内が彼女と初めてのドライブであった。
 簡潔に言えば粗野で、乱暴で、雑で、それでいて――速かった。車長の立ち位置から見ていた光景は単なるグラウンドではなくどこか有名なサーキットのように見えた。急なカーブをよくもまぁ戦車を滑らすものだと感心するようなドリフトや、エンジンはここまで回るのかと感嘆するほどの直線のスピード。彼女の乱暴な運転を感じると共によくこれだけの運転についてこれる整備をしたものだと、えらく私は気に入ってしまった。
 ドライブの後、戦車から出た彼女の顔に流れる汗は酷くかっこ悪い、と思ったと同時に夕焼けに乱反射したその光が綺麗な色に輝く宝石のようだとも思った。粗野で乱雑でそれでいて気持ちのいい汗だった。
 貴方に紅茶の名前を授けたい、そう申し出ればなんとも驚いた顔でこちらを見てきた。そして私に自分の運転は嫌じゃなかったか、と尋ねてきた。暗に、自分に授けてしまっていいのか、というような意味合いを込めて聞いてきたのだと思う。えぇ、構わないわと返すと汗塗れの顔で嬉しそうに笑うのだからこちらも思わずくすり、と笑ってしまう。一挙一動が気持ちのいい娘だな、というのが正直なところだった。
 名前を授けてお茶会をしてみれば、どうやらマナーもあまり知らないようで私も私の同級生もそして後輩すらも楽しくマナーを教えてしまう。こういう娘が一人ぐらいいてもいい、そういうような心持ちができてきたようだ。彼女を拾ってからやっかみで嫌味を言うような優雅さに欠けた人物もいたりはしたが、毅然と返してやった。それからして、異様に彼女は私になつきダージリン様、ダージリン様と慕ってくる。なんだか可愛らしいペットでも飼ったような、そんな気分でもあった。彼女のおかげで私の、聖グロリアーナの戦車道には新しい風が流れてきた。
 たまには彼女の運転にも付き合ってあげないと、と思い、ハンドタオルを忍ばせ、彼女の運転する戦車に同乗する。面と向かって本人には言えないが、やはり貴方を見つけられて私は本当によかったと、車内でティーカップを持ちながら彼女の運転する背中を見ていた。

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